コンクリート構造物のプレキャスト化を進めるには、メーカーと工事の発注者、設計者、施工者が、それぞれの立場で果たすべき役割がある。苦言を含めて普段、互いに面と向かって口にするのは難しそうな本音を匿名で語ってもらった。

「設計協力したメーカーの言い値になることも」
 準大手建設会社

 工事現場で働き方改革を実践するには生産性の向上が欠かせない。プレキャスト・コンクリート(PCa)の採用はその有効な手段の1つだ。ただ、採用に際しての現場の検討ではいつも悩む。

 例えば、工期を短縮できる一方で、材料費が現場打ちよりも高くなりがちであること。設計段階でPCaの採用が盛り込まれている場合、工事によってはPCaメーカーの選択肢が設計や見積もりに協力している1社しかなく、メーカーの言い値で仕入れざるを得ない場合もある。

 PCa部材を運ぶうえでの問題も悩ましい。まずはトレーラーをタイミングよく手配して現場に搬入できるかどうかだ。運送会社の都合があるうえ、部材の重量や寸法が大きいと、道路管理者に対する特殊車両通行許可申請の手続きも必要になる。

 大きな部材は現場への搬入後、クレーンによる揚重計画が難しい(写真1)。部材の仮置きヤードとは別に、クレーンの組み立てヤードが必要な場合もある。

写真1■ コンクリートのプレキャスト化には、クレーンなどを支障なく使える施工計画が必要だ(写真:日経コンストラクション)
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 部材をトレーラーで搬入しやすく、広くてクレーンも使いやすい場所で、同一断面の部材を長い区間にわたって数多く設置する現場は、PCaの採用が非常に有効だ。これは施工者にとって利益を出しやすい“おいしい”現場でもある。

 逆に、狭い場所で複雑な形の躯体を構築するような現場にPCaは向かないといえる。平地よりも山地の占める割合が大きい日本国内では、このような現場の方が多いかもしれない。

 

「実態に即した施工歩掛かりを公表して」
 大手建設会社

 PCaの採用に伴うコスト増を抑えて採算性を改善するため、PCaメーカーと建設コンサルタント会社に要望したいことがある。

 PCaの水路や側溝は、表面の粗さを表す粗度係数を現場打ちよりも小さくしやすい。水が素早く流下するので必要断面積を小さくできる。メーカーの技術開発で、この粗度係数をさらに低減してほしい。水路などを据えるための掘削作業のコストを減らす効果が見込めるからだ。

 設計では、最初からPCaとして設計してもらえるのがベストだが、発注者からの指示でそうはできない場合でも、断面をなるべく単純で変化が少ない形にするなどシンプルな構造で設計してもらいたい。施工の段階でPCaに替えることを発注者に提案する際、設計変更がしやすくなる。

 メーカーが出している二次製品のカタログや積算資料には、改善してほしい部分がある。実態よりも施工条件などが良い施工歩掛かりを掲載しているケースが散見されるのだ。高いと言われがちな二次製品をできるだけ採用してもらいたいからだろうが、現場の技術者としては困る。しっかりと現場を調査して、正確な数字を掲載してほしい。

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