取り付けが容易なプレキャスト・コンクリート(PCa)床版は、取り外しも簡単だ。地上から見えない桟橋の杭や梁でも床版を外してしまえば点検しやすく、維持管理費用を抑えられる。PCaの意外なメリットに注目だ。

伏木富山港の桟橋
杭や梁の潜水点検を効率化
コスト2割減を見込む

 インフラ構造物の点検に要する費用は増える一方だ。ドローン(小型無人機)やAI(人工知能)を使って点検を効率化しようとする動きが活発な中、PCaを使った全く新しいアプローチで費用を低減しようとする取り組みが、富山県で始まった。

 桟橋の床版を梁から簡単に取り外しできる「リプレイサブル桟橋」の実証試験だ。港湾空港技術研究所と日本埋立浚渫(しゅんせつ)協会が共同開発した。伏木富山港の岸壁延伸で設置した桟橋の一部に適用(写真1)。2019年5月に耐荷力試験を実施し、性能の検証を始めた。

写真1■
床版の設置状況。床版上に飛び出た円形座金の蓋の高さまで舗装する(写真:国土交通省)
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↑↓ 床板を取り外し可能

床版を取り付ける前。桟橋は2018年度に施工(写真:国土交通省)
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ライフサイクルコストで有利に

 最大の特徴は、格子状に配した梁に載せたPCa床版を、ナットで押さえて固定する構造にしたことだ。部材同士を現場で接合しなければならないPCaの弱点を逆手に取った。従来は現場打ちコンクリートなどで一体化していた。

 点検したい杭や梁の直上の床版をクレーンで取り外せば、そこから潜水士が潜って目視できる。国土交通省はリプレイサブル桟橋を採用すれば、点検コストを2割減らせると見込む。

 普段、桟橋の梁や杭といった地上から見えない部分は、数年ごとに潜水士が海中から点検する。日光が当たらない暗闇で数十メートル四方の桟橋を泳ぎながら点検するのは効率が悪く、費用が割高になりやすい。

 点検の効率化は、人手不足の問題の解消にもつながる。実証試験の検討や分析を担当する国交省北陸地方整備局新潟港湾空港技術調査事務所の泉田裕副所長は、「地震直後の一斉緊急点検では、潜水士の取り合いになることがある」と明かす。

 実証試験では今後、床版の取り外しや点検の方法を確認していく。リプレイサブル桟橋の点検の歩掛かりを算出して、ライフサイクルコストなどを作成することが目的だ。床版と梁の連結部の部材が増えるので、通常のPCa床版よりも初期費用は高い。だが、点検費用を抑えられれば、全体で安くなる可能性がある。

 一連の試験は19年度内に終える見込みだ。新潟技調では、成果をまとめた設計・施工マニュアルの作成も視野に入れる。

 リプレイサブル(交換可能)という名前だが、「床版よりも、海面に近い梁の方で先に劣化が進むだろう。床版だけを取り換えることは想定していない」(新潟技調設計室の大井栄二郎先任建設管理官)。

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