現場打ちコンクリートの品質は、天候や作業員の習熟度など数多くの条件に左右される。海に面した現場やトンネル内の上向き打設といった厳しい施工環境では、プレキャスト部材の活用が品質向上に有効だ。

青森港の桟橋
施工中の冠水リスクを克服
設計変更は最小限に

 現場打ちコンクリートの敵は多い。海に面した桟橋工事では、天候の他に潮位や波浪にも気を配る必要がある。打設中や養生中に海水の塩分が混ざったり、波による振動が加わったりすると、品質の悪化を免れないからだ。

 国土交通省東北地方整備局が2017年に発注した青森港の桟橋工事は、まさに難条件が重なった現場だった。受注した五洋建設は、鋼管杭の柱頭部同士をつなぐ梁にプレキャスト・コンクリート(PCa)を活用して乗り切った(写真1)。

写真1■
鋼管杭とPCa梁の接合部。現場打ちに比べて工期を3割短縮できた(写真:五洋建設)
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100tのPCa梁の架設。チェーンブロックを使って水平を保ちながら施工した。梁1本と接合する杭は3本。床版は当初からPCaを使う計画だった(写真:五洋建設)
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 コンクリート製の梁は当初、現場打ちで設計されていた。ところが、梁の下面の高さは湾内の最低潮位とほぼ同じだ。支保工や型枠の組み立てに潜水士が不可欠なうえ、現場が冠水するリスクと隣り合わせでコンクリートを打設する必要があった(写真2)。

写真2■ PCa梁を採用して2018年に竣工した青森港の桟橋。海水に漬かる高さにコンクリートを打設する場合でも、潮位が下がるときを見計らって現場打ちで施工することが多い(写真:五洋建設)
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杭の施工誤差を接合部で吸収

 五洋建設は工事の受注後に、PCa梁の採用を提案。梁に埋め込んだ鋼製のさや管を鋼管杭にかぶせて接合する工法を確立し、公共工事に初めて適用した。台風の影響で着工が遅れたので、工期短縮を主目的に設計変更が認められた。

 同社技術研究所土木技術開発部の池野勝哉担当部長は、次のように振り返る。「プレキャスト化に要するコストは、手配できる海上クレーンの吊り能力や係留地、打設ヤードの場所に左右される。幸いにも、いずれも近場で確保できた」

 先の接合方法は、五洋建設が東京工業大学、港湾空港技術研究所と共同で開発した。梁の主鉄筋と鋼管杭よりも直径が20cm大きいさや管とを溶接する。杭の水平位置の施工管理基準は10cmなので、誤差を吸収できるようにした。さや管を杭に差し込み、両者の隙間に無収縮グラウト材を充填して一体化する(図1)。

[現場打ちの従来工法]
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[開発したPCa梁の工法]
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図1■ 梁の配筋はほぼ当初設計のまま
開発した工法は、梁の鉄筋を切ってさや管に溶接すればよい。これまでのPCa梁は、さや管の代わりにコンクリート製のパイプなどを使っていた。鉄筋を曲げて管を迂回する必要があり、設計変更に手間が掛かった(資料:五洋建設)

 青森港の桟橋工事では、現場近くの岸壁に屋根や仮囲いを設けた施工ヤードを整備して、長さ14m、重さ約100tのPCa梁を6本製作。300t吊りの海上クレーンで架設した。五洋建設技術研究所の水流正人所長は、「冬季の施工だったので、プレキャストでも養生に難儀した。海上の打設であれば、苦労は陸上の比ではなかっただろう」とみる。

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