「プレキャスト化の提案が通っていればなぁ」。地方の建設会社に勤める所長は、5日間にわたって降り続く雨を恨めしそうに眺めながらつぶやいた。

 ボックスカルバートの打設が雨で何度も延期になり、一向に進まない。協力会社に頼み込んで必死にかき集めた鉄筋工や型枠大工の熟練作業員は引く手あまたで、来月からは別の工事で予定が埋まっているという。このままでは、工期に間に合わない。

 出水期が始まる6月までに工事を終わらせるため、工期が厳しいことは受注前から分かっていた。そこで所長が考えたのが、現場打ちで設計されたボックスカルバートをプレキャスト・コンクリート(PCa)に設計変更する提案だ。

 工場で製作した函体を並べて連結するだけなので天候の影響を受けず、現場の工程を1カ月以上短縮できる。据え付け作業だけならば経験の浅い作業員にも任せられるので、人手に苦労することはない。所長は部材を吊るためのクレーンを作業ヤードに設置できることを確かめてから、発注者に持ちかけた。

 しかし、提案は却下。「コスト増は受け入れられない」と、にべもない。

 確かに、積算基準に従って直接工事費を比較すると、PCaの方が1割ほど高くなる。工場の管理費などが上乗せされるからだ。追加費用を施工者が負担する施工承諾なら認めてもよいと言われたが、赤字になっては元も子もない(図1)。

[PCa採用のメリット]
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[PCaの採用前にそびえる壁]
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図1■ PCaの採用には高い壁が立ちはだかる
取材を基に日経コンストラクションが作成

 所長が「作業員が集まらない」と訴えても、「それは施工者の問題だ」と返ってくる。品質や安全性が向上すると説明しても、「品質確保は施工者の当然の責務だし、安全管理費は積算に入っている」と、取り合ってもらえなかった。

 「あれほど建設業界の生産性を上げろと言われているのに、結局コストか。ロボットやドローンばかりもてはやされて、コンクリート工は何年も前から変わりゃしない」。所長は降り止まない雨に向かって毒づいた──。

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