関西国際空港の大規模冠水やタンカー衝突による関空連絡橋の橋桁損傷など、過去に類のない被害で話題をさらった台風21号。2018年9月4日に日本へ上陸したこの台風は、阪神間の沿岸部でもう1つ、あまり知られていない「最悪の被害」を届けている。それは被害額だ。

 台風21号に伴って日本損害保険協会などの会員企業が支払った保険金は、調査を開始した1970年以来、過去最高額となった(下のグラフを参照)。保険各社によると19年4月の時点で、査定途中の被害物件が残っており、数値はまだ伸びそうだ。

■ 台風21号の被害額は過去の風水害の中でも群を抜く
過去の風水害のうち、支払い保険金が多かった順に並べた。日本損害保険協会と外国損害保険協会の会員による支払い保険金の合計値。「2018年7月豪雨」は18年12月11日時点、「2018年台風21号」と「2018年台風24号」は19年3月11日時点、それ以外は18年3月31日時点のデータ(資料:日本損害保険協会)
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 被害形態の内訳では、過去最大級の暴風で生じた「風災害」が最も多い。屋根が飛ばされたり、その屋根が凶器となって別の家屋に被害を及ぼしたりした。

 高潮・高波、津波の浸入を防止する海岸保全施設(防護ライン)より外側に位置する堤外地での浸水も、大きな被害をもたらした(図1、写真1)。大阪市や神戸市では過去最高となる潮位を記録。土木学会海岸工学委員会などの調査によると、最大の浸水深さは大阪港の人工島で2.3m、神戸港で1.95mに及んだ。

図1■ 大阪湾に歴史的な浸水被害をもたらした台風21号(資料:Google、国土交通省)
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写真1■ 咲洲の環状西線の臨港道路で起こった浸水被害(写真:大阪市)
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 コンテナの流失、護岸ブロックの倒壊、荷役機械・電気設備の機能喪失、コンテナ貨物や中古車の水没──。関西圏の経済機能を麻痺させる被害が続出した(写真2)。

写真2■ 神戸港における港湾施設の被害状況。コンテナの漂流や流失などが目立った(写真:鈴木高二朗・港湾空港技術研究所耐波研究グループ長)
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 これまで堤内地の浸水対策としては、行政が主体的に海岸保全施設を整備し続けている。例えば、神戸市は南海トラフ巨大地震の津波対策も兼ねて、防潮堤のかさ上げを実施してきた。

 「津波対策が功を奏して、台風21号による高潮から、堤内地のかなりの部分を守れた」と、神戸市港湾局工務・防災部海岸計画担当の小泉陽司係長は胸を張る。

 一方、堤外地の対策については、民間事業者の裁量に任せていたのが実情だ(図2)。そのため、堤外地における高潮ハード対策は、ほとんど手付かずといっても過言ではない。

図2■ 堤外地の浸水対策は民間企業頼みに
防護対象堤外地堤内地
人命官民で津波避難施設の整備や避難訓練を実施堤外地での対策に加えて、高潮・高波、津波の堤内地への浸入を防止するよう行政が主体的に海岸保全施設の整備などを実施
資産民間企業が自社の責任で護岸の整備・かさ上げやBCP(事業継続計画)作成などの防災対策を実施
(資料:国土交通省)

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