民家を襲う流木に既存堰堤の改修で対応

 2018年は広範囲で大雨が降った西日本豪雨の影響を強く受けて、集計を始めた1982年以来最多となる3459件の土砂災害が発生した(図1)。これまでの年間平均発生件数の実に3.4倍に当たる。死者・行方不明者数は、平成で最も多い93年の174人に次ぐ、161人だった。

図1■ 2018年の土砂災害発生件数は1982年以来最多
過去10年の土砂災害による被害件数の推移。 集計を開始した1982年から2017年までの平均発生件数は1015件。18年は年平均の約3.4倍の件数だった。人的被害や家屋の被害は、過去10年で最悪となった。国土交通省と総務省消防庁の19年1月時点での公表資料を基に日経コンストラクションが作成
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 国は、これまで全国に約6万基もの砂防堰堤(えんてい)を造って、土砂を食い止めてきた。しかし近年、従来の堰堤だけでは災害に対応できなくなっている。想定を上回る雨量で、土砂と一緒に大量の流木が流れ込むようになったためだ。

 国内にある砂防堰堤のうち、大半が土砂をためる目的で設計した「不透過型」だ。山崩れによって、上流から流れてくる土砂をためて堰堤は満杯になる。その上を、比重の軽い流木は水とともに越えてしまう。下流まで運ばれた流木は民家に衝突し、道をふさいで復旧活動を妨げる。

 西日本豪雨では、川から流れてきた大量の流木が橋に引っ掛かり、そこでせき止められた水が道路にあふれて被害を拡大させるケースがあちこちで見られた(写真1)。もはや流木は土砂同様に、砂防上の喫緊の課題になりつつある。

写真1■ 上流から流れてきた巨石や流木が橋に引っ掛かり、河道を閉塞した広島県坂町の様子。土砂が住宅地にあふれた(写真:日経コンストラクション)
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第1号の「張り出しタイプ」が完成

 国土交通省は、2016年4月に砂防基本計画策定指針を改定。新設の砂防堰堤には原則、流木を捕捉できる透過構造を採用するようにした。

 さらに17年の九州北部豪雨での被害を受けて、既設堰堤を活用する方針も打ち出している。「手間の少ない方法で流木対策を講じるのが主流になる」と、国交省砂防部保全課の岩男忠明企画専門官は話す。

 これまでは、既存堰堤で流木を捕捉するために、堰堤の水通しを切り欠いたり袖部をかさ上げしたりしていたので、費用や手間がかかっていた。そこでJFE建材は、できるだけ本堤に手を加えずに短い工期で施工できる「流木止め」を開発した。従来のように水通しに設置するのではなく、その上流側に直接取り付ける「張り出しタイプ」だ。堰堤に砂が多くたまっている場合はじか付けできないので、本堤の上流に単独で設置するタイプもある。

 19年4月には、群馬県の二又沢上流にある不透過型の砂防堰堤で、張り出しタイプの第1号が完成した(写真2)。調整用のコンクリートを打設して、アンカーボルトなどで鋼管を固定するだけで施工できる。

写真2■ 張り出しタイプの流木止め。格子状の鋼管を本堤にじか付けする(写真:砂防・地すべり技術センター)
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 流木が流域を越えて民家を襲うようになったことを受け、土木研究所は山間部の広い流域を対象に流木の流出量を推定する手法の研究なども始めている。地形条件による流出や堆積のしやすさが分かれば、砂防堰堤や流木止めをより効果的に配置できるようになる(写真3)。

写真3■ 透過型砂防堰堤の例。西日本豪雨では、兵庫県宍粟(しそう)市にある透過型の堰堤が約8000m3の土砂や流木を捕捉した(写真:国土交通省)
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