日経コンストラクションの読者投稿欄「ねっとわーく」に寄せられる意見は、その時代の世相を色濃く反映している。同欄に掲載した読者の生の声を交えながら、土木界にとって平成とはどんな時代だったのか、振り返ってみよう。

 「建設業は活況で作業員が足りない」、「公共事業の予算は伸びているのに、それに見合うように職員の数は増えていない」――。一見、最近の投稿のようにも見えるが、実は平成初期の読者の声だ。

 当時はバブル経済の真っただ中。建設投資は右肩上がりで伸びていた。さらに、1990年の日米構造協議では、海部内閣が米国に対し、向こう10年間で430兆円の公共投資を行うことを約束。公共事業の増加で業界が潤うなか、現場では人手不足が叫ばれていたのだ。

世の中の出来事 土木業界の出来事
平成元年
(1989)
  • 税率3%の消費税が導入
  • リクルート事件
  • 日経平均が史上最高値の3万8957円
  • ベルリンの壁崩壊
  • 1988年の日米建設合意で、建設業許可を受けた海外建設会社が増加
  • 福井県内の国道305号で岩盤が崩落。ロックシェッドを押し潰し15人死亡
  • 人材不足による建設業の倒産件数が製造業を抜いてトップに
平成2年
(1990)
  • イラクがクウェートへ侵攻
  • 東西ドイツが統一
  • 大蔵省が不動産融資の総量規制。バブル崩壊へ
  • 初の大学入試センター試験
  • 日米構造協議における米国の要求で公共事業を拡大
  • 海外開放プロジェクトとして、日本道路公団が景観検討業務を指名プロポーザルで委託
  • 「多自然川づくり」スタート
  • 東京の東北新幹線御徒町シールドトンネル工事で噴発事故
平成3年
(1991)
  • 湾岸戦争が勃発、ソ連解体
  • 長崎・雲仙普賢岳で火砕流
  • ジュリアナ東京がオープン
  • 広島新交通システムの工事現場で橋桁落下事故。15人死亡
  • 神戸市が自治体初のVE契約を試行
  • 建設省が入札・契約制度の改善策を発表。公募型指名競争入札の試行を打ち出す
平成4年
(1992)
  • PKO協力法が成立
  • 東京佐川急便事件
  • 毛利衛氏が宇宙に
  • 建設投資がピークの84兆円
  • 建設省が工事安全対策を発表。設計審査制度や施工条件検討制度を創設
  • 建設省が優秀施工者(建設マスター)建設大臣顕彰制度創設
  • 埼玉土曜会談合事件。建設会社66社に排除勧告
平成5年
(1993)
  • 政権交代で細川内閣が発足
  • 釧路沖地震
  • 北海道南西沖地震で奥尻島に津波被害
  • レインボーブリッジが開通
  • ゼネコン汚職事件で大手を含む建設会社7社の幹部逮捕
  • 建設省が制限付き一般競争入札を試行
  • 新東名・新名神に施行命令
  • 道路構造令が改定。車両の重量制限が20tから25tに緩和

以下は日経コンストラクションの読者投稿欄「ねっとわーく」から抜粋。年齢はいずれも掲載当時のもの

内需拡大政策で建設業は活況を呈している。しかし、その結果生じた作業員不足や他産業に人材が流れていくなどの問題について、仕事が忙しいことを理由に目を背け、なおざりにしているのではないだろうか(28歳、公団)


仮締め切りが倒壊して、橋の下部工事やトンネル工事で死者を出す事故が続いた。発注側の技術者不足で、指定仮設の検討が不十分だったのではないか。公共事業の予算は急激に伸びているのに、それに見合うように職員の数は増えていない(58歳、中央官庁)


自治体の予算は年度ごとに区分されており、工事も年度ごとに独立して発注されている。秋から春までの間に工事が集中するため、年間を通して繁閑の差が大きくなる。施工者から不満を耳にすることが多い(39歳、自治体)


御徒町トンネルの事故などで、建設会社に薬液注入の手抜きがあったのではないかと報じられている。しかし、工事を発注した側の設計や積算に問題はなかったのか、また元請けと下請けの関係はどうなっていたのか。現在の土木業界の問題点が詰まっていると感じる(40歳、自治体)


日米構造協議で米国が要求した公共投資の大幅増額を日本は受け入れた。言葉通りにインフラ整備を進めれば、現在でも不足しがちな作業員はどうなるのか。考えただけでもぞっとする。混迷の結果、業界再編に進むのだろうか(49歳、専門工事会社)


大手建設会者が週休2日制を導入すると聞いた。だが、作業員の多くはいまだに日給制だ。休日が増えるだけでは実質賃金が下がる。賃金を支払わずに「休め」と言うのは、本当の休日ではないと思う(46歳、建設会社)


建設産業の社会的地位が低い原因は甲乙の契約制度にある。実績主義の日本ではどうしても受注者の「請け負け」になる。これは、指名競争入札で不調になっても、発注者が指名会社だけ入れ替え、予定価格を変えずに落札させてしまう例からも明らかだ。工事需要の多い今こそ、受注者側も言いたいことを言わなければならない(37歳、建設会社)


最近、作業服のデザインが今風に変わりつつある。人に見られることを意識し始めた証拠だろう。ただ、残念なのは私たち女性向きのサイズがほとんどないことだ(28歳、測量会社)


日本の建設業界は汚職や談合問題で揺れている。問題の根源は指名競争入札にある。官民の癒着をもたらし、自由な競争を妨げている。指名入札をなくせば、悪循環は断たれるはずだ(61歳、建設コンサルタント会社)


魅力ある建設業を実現するためには、いかに新しい技術を導入、普及させるかがポイントだ。思い切った新技術を導入するために、プロポーザル方式がある。官庁でもシステム開発などでこの方式を導入して成果を上げている(35歳、自治体)


長良川河口堰に限らず、根本的なところに立ち返って事業の必要性を考えるべき時代になっている。計画段階で十分討議することは、施工する建設会社からも望まれることだ。誰だって不必要な工事を精魂込めてやろうという気は起きない(43歳、建設コンサルタント会社)

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