公共事業に対する市民の疑問や不満が、2009年(平成21年)の政権交代の原動力となり、民主党政権を生み出した。同政権は「事業仕分け」で公共事業などを削減。賛否両論を呼んだ施策の実像を、発案者の加藤秀樹・構想日本代表が語った。

INTERVIEW≫ 構想日本代表 加藤 秀樹氏

(写真:日経コンストラクション)

かとう・ひでき
1950年生まれ。大蔵省(現財務省)勤務後、97年に政策シンクタンクの構想日本を設立。2009~12年に内閣府行政刷新会議事務局長を務めた。15年から京都大学経済学研究科特任教授

仕分けから「レビュー」へ、次代こそ真価

 民主党政権では、事業仕分けでスーパーコンピューターの予算について、理化学研究所を「2位では駄目なのか」と問い詰める蓮舫議員が有名になりました(写真1)。そのため、同政権と共に事業仕分けも終わったような印象があるのですが。

写真1■ 民主党政権が2009年11月に開催した事業仕分けの様子(写真:日経コンストラクション)
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 それは違います。現政権でも「行政事業レビュー」と名を変えて継続しています。安倍政権が民主党政権から引き継いだ唯一のものと言われているくらいです。

 もともと国レベルでの事業仕分けを最初に行ったのは、民主党政権より前の麻生内閣時の自民党「無駄撲滅プロジェクトチーム」だったという流れもあります。

 厳しい言い方になりますが、メディアが蓮舫議員の発言しか覚えていないところに問題が集約されています。構想日本の主目的は歳出削減そのものよりも、事業の中身をチェックする「仕組み」を政府の中に作ること。それには成功しました。これが欧米なら、ジャーナリズムはこの仕組みをフルに使って政府の事業を自ら調べ、報道や論評をするでしょう。

 ところが、日本のメディアは仕分けを当日だけのイベントとしか扱わない。仕分けとかレビューは、国民に対する情報開示の手法であり、それを活用するのはジャーナリズムをはじめ国民のはずなのですが、残念ながら日本ではそこがありません。

 民主党政権の事業仕分けは、削減や廃止が目的のようになっていませんでしたか。

 繰り返しになりますが、事業を減らすのが目的ではありません。2009年以来、各省庁が所管する事業の目的や内容、費用、期待される効果などを記載した「レビューシート」を作成しています。それを民間人中心の「仕分け人」が、事業が実施されている現場の視点でチェックするのが事業仕分けです。削減や廃止はあくまでも結果の1つです。

 また、政策論でもない。政策論としてその事業をやるべきかどうかを論じるのは国会や議会で行うべきことで、そこで決まった事業が現実に国民や住民の役に立つのかをあくまでも現場目線でチェックするのが事業仕分けです。

 廃止になったはずの高規格堤防(通称スーパー堤防)の整備事業を、国土交通省が後に縮小しながらも復活させたのは、事業仕分けの限界だったのでしょうか。

 これも繰り返しになりますが、仕分けやレビューは議論の場であり、決定は担当の官庁が行います。その意味では権限には当然、限界があります。しかし、仕分けの機能に限界はありません。仕分けの議論やそこで明らかになった事実をメディアや企業や個人が大いに使って政府に意見を言えばいいのです。政治に民意を反映させるのが仕分けの機能ですから。

 12年12月の総選挙に伴う政権交代で第2次安倍内閣が発足しました。公共事業が増加に転じましたが、事業仕分けは行政事業レビューに名前を変えて存続したわけですね。

 行政事業レビューは現在、内閣官房の行政改革推進室という部署(民主党政権の時は内閣府行政刷新会議)が行っています。事業仕分け以来、国が行っている約5000の事業全てについて行政事業レビューシートが作られています。それを基に春、秋の年2回、事業レビューが行われています。秋のレビューではかつて「仕分け人」と呼ばれた外部有識者が参加して議論しています。かなりの人が民主党政権以来継続しています。

 レビューの継続に当たっては、行革担当の稲田朋美大臣や河野太郎大臣が、政権が交代したにもかかわらず事業仕分けの有効性をフェアに判断してくれたことが大きく寄与していると思います。

 平成の次の時代はどうなるでしょう。

 レビューシートは国のお金の使い方が有効かどうか、よく読めば誰でも分かるようになっています。今年度の国の予算は100兆円を超えました。近い将来、国の事業に大ナタを振るう必要に迫られるでしょう。その時には改めて行政事業レビューが前面に出てきて民間あるいは国民の目で見て事業の洗い直しが行われることになるでしょう。その予兆は既にあり、ここ数年自治体での事業仕分けは年々増えています。

 構想日本は、国の事業がもっと国民に身近になるよう「レビューシート」のデータベース化を進めています。多くの国民が「自分ごと」として、さらには仕分け人になったつもりで国が行っている事業を考えられるよう、様々な検索ができる使いやすいものを目指しています。3月中に発表します。

 そうやって多くの国民が、生活感覚、ビジネス感覚で国の事業についてどんどん意見を言う国にしたいのです。そのことが「トランプ現象」はじめ欧米で見られる民主主義の機能不全を防ぎ、健全な政治をつくることになるのです。

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