「談合はもとより様々な非公式な協力など旧来のしきたりから決別する」。日本土木工業協会は2006年(平成18年)4月、提言を発表した。いわゆる脱談合宣言だ(図1写真1)。土工協副会長として当時、取りまとめを担った山本卓朗氏に聞く。

INTERVIEW≫ 日本土木工業協会 元副会長・広報委員長 山本 卓朗氏

(写真:日経コンストラクション)

やまもと・たくろう
1941年生まれ。64年日本国有鉄道入社、94年JR東日本常務取締役を経て、2002年鉄建建設社長。05年日本土木工業協会副会長、11年土木学会会長を歴任

「決別」当時の緊張感を忘れるな

 「旧来のしきたりから決別する」という強い言葉に決意を感じます。どんな経緯があったのでしょうか。

 価格と技術提案を総合的に評価して落札者を選ぼうという公共工事品質確保法(品確法)が2005年4月に施行しました。「新しい入札・契約制度を拡大していくなかで、建設会社は談合からきっぱりと足を洗うべきだ」。05年11月、国土交通省と業界団体との懇談会の席上、国交省からこうした話がありました。これを受けて、まずは大手建設5社のトップが申し合わせ、人の異動や組織の改編などに着手したのです。

 しかし、各社は疑心暗鬼でした。そこで、土工協(現・日本建設業連合会)が外部の有識者を交えて「透明性ある入札・契約制度に向けた検討会議」を立ち上げ、外部に向けて発表しようと考えたのです。

図1 ■ 自らの「改革姿勢」と発注者への「要望」を併記
「談合はもとより旧来のしきたりから決別する」(日経コンストラクション加筆の赤線部分)と宣言した(資料:土工協)
[画像のクリックで拡大表示]
写真1■ 2006年4月、記者会見に臨む土工協などの幹部。右端が山本氏(写真:日経コンストラクション)
[画像のクリックで拡大表示]

 みんな半信半疑だったでしょう。なぜなら、談合はこれまで「必要悪」だと言われ続けてきたからです。なくすと業界が大混乱するぞと。

 なぜ混乱するのでしょうか。

 大きなプロジェクトになるほど、どうやって施工するのか、どれくらいのお金や時間がかかるのか、どんな技術を開発しなければならないのかなどを、工事が公告される数年以上前から検討しなければなりません。いわゆる発注者や建設コンサルタント会社への「事前協力」です。かなり広範囲に行われていました。

 建設会社が発注者の技術力不足を補ったり、施工に疎い建設コンサルタントを手伝ったり。建設業界全体がこの仕組みで動いていたのです。

 この仕組みを無視して、事前協力していない建設会社が突然、工事を受注しても、準備していないからうまくいかない。談合をやめるということは、事前協力も含めて全てやめるということです。これで本当に仕事は回るんですか、という声はありました。

 それでも談合をやめようと。

 痛みはあります。しかし、業界ぐるみの法律違反は脱しようと。

 ここまでの決意ができたのは、品確法が施行したことがすごく大きい。もう我々はルビコン川を渡ったんだから、決して戻らないぞという覚悟でした。

 支店の営業担当者などを本社などに異動させました。本人が談合や事前協力に加担しなくても、「あなたが支店にいると、周りの人があなたを頼ってしまうから」と説得しました。

 建設会社にとって当時、「アメ」である品確法だけでなく、「ムチ」もありました。課徴金の引き上げなどを盛り込んだ改正独占禁止法の施行です。指名停止2年といった重いペナルティーを科す発注者もいます。建設会社がひとたび問題を起こすと、企業の存続に直結するのです。

 入札・契約制度の改革とセットで進める必要がありますね。

 その通りです。土工協を含む業界団体と国交省地方整備局との意見交換会を毎年やっています。提言を発表した06年は、業界団体側から発注者に向けてかなり発言しました。提言の中で要望していることは必ずやってほしいと。

 発注者はやってくれたのでしょうか。

 残念ながら、当初は大混乱が起こってしまいました。いわゆるダンピング受注です。

 品確法において、技術提案の評価がかなりファジーでした。A社とB社に得点差を付けるのは難しい。結局、価格で差が付いてしまったのです。

 その後、2014年の「担い手3法」の成立で適正利潤の確保がうたわれ、低入札価格調査基準や最低制限価格が引き上げられました。国交省は相当努力して、我々の提言に魂を入れてくれたのだと感謝しています。

 一連の出来事や緊張感を、10年後、20年後も誰かが語り継いでいってほしい。そうすることが、談合事件を二度と起こさないことにつながると思うのです。

この先は有料会員の登録が必要です。「日経コンストラクション」定期購読者もログインしてお読みいただけます。今なら有料会員(月額プラン)が2020年1月末まで無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら