土木が得意な建設会社を、隣接業種の建設コンサルタント会社や通信工事会社、レンタル会社などが買収するケースが目立つ。設計から施工まで一貫して手掛けたり、自社製品の販路を拡大したりと、思惑は様々だ。買い手側の狙いを探る。

 建設コンサルタント会社が建設会社を買収するという、新しいアライアンスの形態が出てきた。2018年9月、アサノ大成基礎エンジニアリング(東京都台東区)が、浜松市を拠点とする三協建設の発行済み株式の全てを取得し、子会社化した(図1)。

図1 ■ アサノ大成基礎エンジニアリングが三協建設をグループ化
アサノ大成基礎エンジニアリングや三協建設への取材を基に日経コンストラクションが作成(写真:日経コンストラクション)
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 官と民の売上高比率が3対7と、民間に強いアサノ大成基礎エンジニアリング。同社による三協建設のグループ化の狙いは、主に民間事業でのシナジー効果だ。

 「三協建設は建築・土木の両方を手掛け、官公庁の案件だけでなく民間にも進出している。さらに、保守的な地方の建設会社と違って、他県にも出て行く機動力のある企業だ」。アサノ大成基礎エンジニアリングの遠藤一郎事業推進本部長はこう話す。同社にとっては、他県で受注した工事でも任せられるため業容拡大に、三協建設にとっては地元での工事が減少した際に新規顧客の開拓につながる。お互いの思惑が一致した。

顧客の要望に併せてM&A

 アサノ大成基礎エンジニアリングはこれまでも、多様化する顧客の要望に素早く対応する形でM&A(合併・買収)を繰り返してきた(図2)。

図2 ■ 顧客の要望に応えて繰り返してきたM&A
(資料:アサノ大成基礎エンジニアリングへの取材を基に日経コンストラクションが作成)
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 同社にとって事業の柱の1つである土壌汚染対策は、発注者と秘密保持契約を結ぶ必要があり、調査から設計、工事まで、できるだけ同じ企業に依頼したいというニーズが強い。そのため、アサノ大成基礎エンジニアリングの前身である旧大成基礎設計は、地盤調査だけでなくその後の浄化工事も手掛けるようになった。

 さらに、地盤調査前の建物の解体も請け負ってほしいというニーズに応えて、同じACKグループ(現:オリエンタルコンサルタンツホールディングス)傘下で、解体工事に強い旧アサノ建工を11年に吸収合併。次に土壌浄化後の工場などの新築依頼が寄せられるようになると、自社に不足する意匠の設計部隊を補うために、鈴木建築設計事務所(千葉市)を15年に買収した。

 そして、純然たる土木工事や建築工事に期待する顧客が増えてきたことから、三協建設のグループ化へと踏み切った。「当社が掲げるワンストップサービスの拡充に向けて、足りないパーツを当てはめるという点で、三協建設はぴったりの会社だった」。アサノ大成基礎エンジニアリングの平山光信社長は、こう振り返る。

復興見据え東南海・南海で探す

 同社が三協建設を選んだ理由は、それだけではない。実はM&Aの検討当初から、東南海・南海地方に絞ってパートナーを探していた。

 「南海トラフ巨大地震が起これば、東南海・南海地方の建設会社は復興で重要な役割を果たすはずだ。我々も、そこを拠点として復興業務に貢献できるというメリットがある」(遠藤事業推進本部長)。

 一方、三協建設がパートナーに建設コンサルタント会社を選んだ理由も気になるところだ。三協建設グループのオーナーである尾藤岩男氏の高齢化や後継者不在がきっかけで譲渡先を探していたところ、県外の建設会社など4社からも声が上がっていた。

 「アサノ大成基礎エンジニアリング以外は、面談での印象が“上から目線”だった。事業が同一で単なる子会社として扱われかねない点で、懸念を抱いた」(尾藤氏)。安心して譲渡できる印象に加え、ワンストップサービスの拡充という戦略で三協建設の強みを最大限に生かせると感じたことが、アサノ大成基礎エンジニアリングを選ぶ決め手になった。

グループで斜面対策事業に

 グループ化から数カ月しかたっていないものの、既にワンストップサービスの拡充につながった例がある。

 静岡県のある別荘地や保養所では適切な斜面管理が必要とされており、これまでアサノ大成基礎エンジニアリングが点検や診断を担っていた。しかし、工事までを含めた複数年での包括契約をしたいという所有者の意向があり、アサノ大成基礎エンジニアリングと三協建設で、調査・設計から工事までをワンストップで対応することになった(写真1)。

写真1■ 包括契約の対象となる別荘地の斜面(写真:エンゼルフォレストリゾート)
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 「官の仕事を民間が担う潮流が生まれるなど、今後、ワンストップで色々なことができる企業が重宝される傾向はますます強まるではないか」と、平山社長はみる。

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