この数年の好業績で潤沢になった建設会社の手元資金。全国展開する大手建設会社などは、M&A(合併・買収)への投資に注目している。中小建設会社とはかなり異なるM&Aの動向を、土木の「お隣」の建築・住宅分野も含めて解説しよう。

動向(1) 海外の拡大に投資

 東日本大震災以降、好業績が続く大手建設会社。大林組、鹿島、清水建設、大成建設を対象に、財務体質の健全性を示すネットキャッシュ(現金預金と短期有価証券の合計から有利子負債を差し引いた額)を算出すると、各社ともこの数年で大幅に改善したことが分かる。大成建設、鹿島、清水建設は「実質無借金」だ(図1)。

図1 ■ スーパーゼネコンの「ネットキャッシュ」が改善
ネットキャッシュは、現金預金と短期有価証券の合計から有利子負債を差し引いた額(資料:各社の決算(連結)資料から日経コンストラクションが作成)
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 大和証券エクイティ調査部の寺岡秀明シニアアナリストは「完成工事総利益率(粗利率)の改善は2017年度で終わったと考えられるが、建設需要自体は東京五輪後もさほど落ち込まない」とみる。「土木は19年度の国の予算案で公共事業費が15%増。建築も大型事業が続く」(寺岡シニアアナリスト)。

 とはいえ、中長期で見ると国内市場が縮小するのは明らかだ。将来に備え、豊富な手元資金を何に投資するかが建設会社の目下の課題と言える。有力な投資先の1つが海外企業のM&A。今後も増える可能性は高い。

 例えば鹿島はこの数年、住宅・建築に強い海外の建設会社を立て続けに買収した(図2)。オーストラリアでは15年に同国の準大手アイコンを買収。さらに17年には同じく準大手のコクラムを傘下に収めた。米国でも17年に、賃貸集合住宅に強いフラワノイを子会社化している。

時期 概要
2015年 カジマ・オーストラリアを設立。オーストラリアの準大手建設会社アイコン(ICON)を買収
2017年 カジマ・オーストラリアがオーストラリアの準大手建設会社コクラム(Cockram)を買収。同社の2016年6月期の売上高は約450億円
カジマ・ユー・エス・エーが、米フラワノイ(Flournoy)を買収。同社は米国南部で賃貸集合住宅の開発・建設・運営事業を手掛ける。2016年12月期の売上高は約200億円
2018年 カジマ・オーバーシーズ・アジアが、医薬品や半導体などの生産施設のエンジニアリング事業を手掛けるシンガポールのインターナショナル・ファシリティ・エンジニアリングを買収。同社の2016年12月期の売上高は約9億円
図2 ■ 海外のM&Aに力を入れる鹿島
(資料:鹿島の発表資料を基に日経コンストラクションが作成)

 中堅ゼネコンの中にも、海外に力を入れる企業はある。浅沼組は18年、シンガポールの建物外壁塗装・修繕工事会社を買収した。アジアでのリニューアル事業の足掛かりにする。

 野村証券エクイティ・リサーチ部の前川健太郎エグゼクティブ・ディレクターは、「リスクを背負って大型工事を受注するよりも、M&Aで着実に事業規模を拡大していこうという思惑が見て取れる」と指摘する。

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