福島は「課題先進県」だ。東日本大震災の復興需要がピークアウトし、今後の市場縮小は必定。人口減少も加速度的に進む。日本の縮図であり、未来図とも言える同県の建設会社は、M&A(合併・買収)によって人や技術を獲得し、生き残りを模索し始めた。

 2010年度に6142億円まで落ち込んだ福島県内の建設投資は、東日本大震災の復興需要で急増し、15年度には1992年度のピークをしのぐ1兆7128億円までV字回復した(図1)。借金体質だった県内の建設会社は復旧工事や除染事業を大量受注し、負債を減らして内部留保を厚くした。

図1 ■ 東日本大震災後に急増した福島県の建設投資
(資料:国土交通省)
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 しかし、そんな「かりそめの繁栄」は長く続かない。復興需要は既にピークアウトし、「面的除染」は帰還困難区域を除いて2018年3月に終了。今後は震災前の状況に戻る。

 震災前、県内の建設会社の売上高営業利益率は東北6県で最低レベルのマイナス3.5%前後まで落ち込み、倒産が相次いだ。福島県建設業協会の鈴木武男専務理事は「当時のような瀕死の状態に、近い将来、再び陥る可能性がある。『ポスト復興』を見据えた経営が問われている」と話す。

 見通しの厳しさと、オーナー経営者の後継者問題が相まって、業績が良い今のうちに休廃業を選択する建設会社は少なくない。一方で、若い経営者がM&Aを活用するケースも目立つ。関連業種の企業を子会社化したり、同地域の建設会社同士で合併したり。M&Aで人や事業を獲得し、生き残りやさらなる成長を模索し始めているのだ。

 M&Aへのニーズの高まりに対応し、従来は地元企業への融資が中心業務だった地方銀行も支援ビジネスに乗り出している。福島市に本社を置く東邦銀行は、全国的にもM&A支援に熱心な銀行の1つだ。

 東邦銀行法人営業部の秦正樹調査役は言う。「直近3年間で当行のM&A成約実績は20件超。建設会社は数件だが、相談は増えている。佐藤工業が戸田建設の傘下に入った影響は大きい(「超名門が選んだ相手は戸田建設 」参照)。M&Aを視野に入れる経営者が以前より増えたと感じる」。

 M&A支援の山田コンサルティンググループ経営コンサルティング事業本部の渡部浩平副部長は、「急増した建設需要が細る未来が目に見えている福島県は、M&Aの先進地域と言えるかもしれない」と指摘する。

 復興需要がピークアウトした「中通り」に、原発事故の後始末が続く「浜通り」。過疎化に悩む「会津地方」(図2)。各地の建設会社のM&A戦略を追った。

図2 ■ 地域によって異なる福島県の建設業界事情
取材を基に日経コンストラクションが作成
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