企業や自治体の目線で南海トラフ地震を捉え、対策の必要性を訴える名古屋大学の福和伸夫教授。様々な組織が連携して創造的な災害復旧を成し遂げるには、起こり得る災害を直視することが重要だと説く。

ふくわ のぶお
名古屋大学教授。日本地震工学会会長、あいち・なごや強靱化共創センターセンター長に加え、内閣府の中央防災会議で「南海トラフ沿いの異常な現象への防災対応検討ワーキンググループ」の主査も務める。南海トラフ地震について執筆した「必ずくる震災で日本を終わらせないために。」(時事通信社)を2019年3月に刊行した(写真:日経コンストラクション)
[画像のクリックで拡大表示]

事業継続計画(BCP)を策定する会社が増えています。南海トラフ地震への対策は順調に進んでいるのでしょうか。

 BCPの策定率は、製造業なども含めて大企業は6割、中小企業はわずか数パーセント程度にとどまっています。大企業であっても、BCPの中身は従業員の命を守るための対策が大半で、工場の操業などに必要なライフラインを確保する対策は何もしていないと言ってよいでしょう。計画を立てている場合でも、被災後も道路や水道は無事だという前提に立っているケースが少なくありません。自分たちの会社の中だけで計画していて、大地震が起きた時にどの道路が安全なのか、水や電気が本当に供給されるのか、実は社内の誰も分かっていない。

だからこそ、対策を事前に検討していない「想定外」の事態に陥りやすいわけですね。では、どうすればよいのでしょうか。

 防災対策は企業や省庁、自治体が個別・縦割りで実施するのではなく、社会の全体像を考えて地域や集団で取り組むべきです。みんなで「ここが駄目になったら全てが終わる」という急所を見つけて、一生懸命に対処しなければならない。

 例えば、ダムや河川が被災して水の供給が止まれば、発電所は稼働できません。電気が無ければガスを精製できない。ところが、一部のインフラの破損によって社会がどのような機能不全に陥るのか、全体を考えている人はほとんどいないのです。

この先は有料会員の登録が必要です。「日経コンストラクション」定期購読者もログインしてお読みいただけます。有料会員(月額プラン)は初月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら