堤防が2カ所同時に決壊する「想定外」の被害に見舞われた岡山県の小田川。わずか1週間で応急復旧を完了するために、通常の施工手順のセオリーを破った。復旧現場で生まれたアイデアを経験知として集め、体系化する取り組みも始まっている。

 2カ所も同時に決壊した堤防を、たった1週間で応急復旧できるのだろうか――。2018年7月の西日本豪雨で決壊した岡山県・小田川の堤防の応急復旧工事。陣頭指揮を執った国土交通省中国地方整備局岡山河川事務所の今岡俊和副所長は当時、そんな不安に駆られていた。「堤防決壊を想定した毎年の机上訓練で十分に準備しているつもりだった。しかし、2カ所同時は考えていない。非常時に何が起こるのか、イマジネーションが足りなかったと痛感した」(今岡副所長)。

 小田川の堤防決壊が判明したのは18年7月7日早朝。岡山県倉敷市内で長さ100m、その約3km上流で同50mの堤体がそれぞれ流出した(写真1)。小田川を管理する中国地整は、決壊箇所から市街地にあふれた水をポンプで川の下流側に戻してから、破堤部分に元の堤体と同じ断面で盛り土する「荒締め切り」で応急復旧することをすぐに決めた。盛り土の河川側の法面には、コンクリートによる法覆工に代えて大型土のうを積み上げる。

写真1■ 決壊した小田川の堤防。荒締め切りの後、市街地側に鋼矢板を打設した。2018年7月11日撮影(写真:国土交通省)
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 荒締め切り工事に着手できたのは2日後の7月9日。中国地整はその1週間後を目標工期に設定した。災害協定を結んでいた地元の建設会社7社を4社と3社に分けて、破堤した2カ所に配置。緊急災害対策派遣隊(TEC-FORCE)の職員も現場に送り込んで常駐させた。

早期復旧を阻んだ2つの難題

 ところが、想定外は堤防が2カ所同時に決壊したことだけにとどまらなかった。今岡副所長は着工早々、2つの難題に見舞われる。

 1つ目は資材の不足。机上訓練では、建設会社や河川事務所が備蓄する資材を使って速やかに工事に着手する手はずだった。しかし、破堤が2カ所に及んだことで資材が全く足りない。必要な土量は1万4000m3、大型土のうは5000個近くに上った。盛り土の材料は決壊箇所から数キロメートル離れた高梁(たかはし)川の河川敷を掘削して確保できた一方、大型土のうは中国地整全域に依頼して、県外からも調達しなければならなかった。

 もう1つの難題は、交通網のまひが想定を上回ったことだ。県内各地の道路に救助活動の車両や住民の車両があふれた結果、大型土のうを運ぶダンプトラックが足止めされて現場への搬入が滞った。机上訓練では、消防本部などと調整することでダンプトラックの通行量を平時の8割程度確保できると見込んでいたが、思惑は外れた。

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