「緊急地震速報です。強い揺れに警戒してください」。気象庁からのメッセージを受信したスマートフォンが、けたたましく鳴動した。間もなく、建物や道路などあらゆる物が激しく揺れ始める。「南海トラフ」でマグニチュード(M)9の大地震が発生したのだ─。その時にどう行動すべきか、考えたことはあるだろうか。

 南海トラフ地震は、ある日突然起こり得る巨大災害だ。太平洋側の沿岸部を中心に広範にわたって最大震度7の揺れが発生し、津波の高さは高知県黒潮町で最大34mに達すると想定されている(図1)。政府の地震調査委員会は2018年1月、今後30年間に南海トラフ地震が発生する確率を従来の「70%程度」から「70~80%」に引き上げた。

図1 ■ 南海トラフ地震の被害想定
複数の検討ケースから被害が最も大きいケースの数値を抜粋。公表以降の防潮堤の整備や耐震化の促進といった防災対策の効果は考慮していない。着色は震度を表し、震源域の陸側で地震が発生したケースを示す。赤が震度7。内閣府の資料を基に日経コンストラクションが作成
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被害は東日本大震災の10倍以上

 内閣府の中央防災会議(中防災)の「南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ」(主査:河田恵昭・関西大学特任教授)が12年と13年に公表した南海トラフ地震の被害想定によると、死亡者数は最大32万3000人。電気や上下水道などのライフラインは機能を停止し、道路は4万カ所以上が寸断される。がれきなどの災害廃棄物は3億1000万t発生するなど、東日本大震災の10倍以上の被害を見込む(図2、3)。

東日本大震災 阪神大震災(参考) 首都直下地震(参考)*1
死亡者数 2万2233人*2 6437人*2 2万3000人
建物の全壊 12万1783棟*3 10万4906棟*3 61万棟
最大津波高さ 16.7m
災害廃棄物 2200万t*4 2000万t 9800万t
道路被害3559カ所 27路線36区間 橋梁の被害など
鉄道被害5600カ所 638kmの区間 軌道変状など
断水(上水道)229万棟 130万棟 東京23区の5割以上の地域
停電850万棟 260万棟
通信障害100万棟 30万回線
直接被害額*516兆9000億円 9兆6000億円 47兆円
図2 ■ 主な大規模地震の被害と被害想定
*1 中央防災会議が2013年に試算した被害想定
*2 行方不明者を含む
*3 住宅のみ
*4 汚染土などを含まない。被害を受けた建物の総床面積に単位面積当たりのがれき量を乗じて算出
*5 建物やインフラ施設の損傷など。それに伴う経済被害は含まない
内閣府、消防庁、気象庁、兵庫県の資料を基に日経コンストラクションが作成
図3 ■ 南海トラフ地震の被害イメージ
(資料:内閣府)
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 建物の損壊と道路などインフラ構造物の被害を合わせた直接被害額は170兆円に上る。民間工事を含めた建設投資額は年間50~60兆円なので、全て復旧に振り向けたとしても丸3年を要する計算だ。

 復旧に必要な経済力そのものをそがれる可能性もある。土木学会の「レジリエンスの確保に関する技術検討委員会」(委員長:中村英夫・東京都市大学名誉総長)は、南海トラフ地震が日本経済に及ぼす影響を試算。18年6月に、国内総生産(GDP)の低迷などで発災から20年間で最大1410兆円が失われると公表し、「国難をもたらす災害」と形容した。

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