2019年度は、技術士第二次試験の試験内容が改正される。択一式の試験が記述式となり、問われる能力も変わる。ただし、出題傾向が読めないからと、諦めるのは早計だ。18年度の建設部門の筆記試験合格率が6.6%と異常に低かった分、反動で合格しやすくなる可能性がある。択一式での足切りがないことも、追い風になるはずだ。(日経コンストラクション)

1. 2018年度の出題傾向

 2018年11月に日本技術士会が発表した技術士第二次試験実施大綱や「技術士第二次試験の実施について」などから、19年度の試験の全貌が明らかになった。大きな変更点として、択一式の試験科目はなくなる。

 18年度も、択一式の合否による足切りが実施された。択一式の試験結果が合格基準に達しなかったために、記述式答案の採点を受けられないまま不合格になった受験者もいた。そのせいか、筆記試験の建設部門の合格率は6.6%と異常に低かった。

 試験制度の改正について詳解する前に、まずは18年度の試験問題をひも解きながら、その出題傾向を解説していこう。

(1)必須科目I(択一式)

 従来通り、択一式の問題は全20問が出題され、受験者は15問を選んで解答し、9問以上に正解すれば合格となる。また、18年度は過去の出題と同様に、選択肢の一部に国土交通白書の記述内容や過去問に類似する問題が見られた。

 ただし、選択肢全てではなく一部だけが過去の出題と類似するという問題が多かったため、戸惑った受験者もいたと思われる。19年度に試験内容が変わるため、出題方法に変化はないと油断したこともあってか、足切りにあった受験者は半分以上いたと推測される。

(2)選択科目II-1(記述式)

 専門知識を問う出題4問の中から2問を選択して、答案用紙1枚ずつに記述する。18年度は全体的に例年通りの難度で、基本的な知識や最新情報を問われた。

 図1に「土質基礎」の出題例を示す。II-1-1は支持力の検討内容について説明を求めている。具体的な計算式までを記述する必要はないが、地盤上部の健全な層の下部に軟弱地盤があった場合の支持力に対する影響を論じる基本的な出題だ。地表面の上載荷重が地中で分散して作用するので、それと許容支持力(あるいは極限支持力)とを比較して、不足ならば対策を取ると記述すればよい。

図1 ■ 2018年度の土質基礎のII-1の出題

II-1-1 地盤調査の結果、上層に良質な地盤、下層に軟弱な地盤が存在することが分かっている。この地盤上で、直接基礎の支持力の検討を行う際に、下層地盤の影響について考慮が必要となる条件と支持力検討の方法および設計上の留意点について説明せよ。

II-1-2 地盤の変形係数について、基礎の設計における主な利用目的を説明せよ。また、変形係数を求めるための調査・試験方法を3つ挙げ、それぞれの方法を概説するとともに得られた変形係数の利用上の留意点について説明せよ。

II-1-3 杭基礎に負の摩擦力が発生する原理と杭基礎への影響を説明せよ。また、負の摩擦力に対して検討する際の留意点を3つ挙げ、その概要を説明せよ。

II-1-4 地すべりの発生形態を岩盤地すべり、風化岩地すべり、崩積土地すべり、粘質土地すべりの4つの型に分類するとき、この分類の基本的考え方と使用法について説明せよ。また、このうち2つの型を選び、その特徴を説明せよ。

 II-1-2は、地盤ばね値に関する出題だ。鉛直支持力と水平支持力を算出するために、鉛直方向と水平方向に分けて記述する。試験方法も別々に記述する必要がある。

 II-1-3は摩擦杭のネガティブフリクションに関する出題で、杭本体の耐力や地盤支持力、杭の突出など基本的な留意点を記述すればよい。

 II-1-4は地すべりの発生形態に関する出題。出題文に分類例が提示され、その内容を問う形式だ。時系列の変状により分類されることが分かっていれば、解答は簡単だ。

 これらの出題では、「3つ挙げ」や「2つの型を選び」のように記述項目数を指定するケースが多い。他の科目でも見られた傾向だ。採点しやすく、採点基準が作成しやすいといった利点があることが推定できるので、今後こういった出題は増える傾向にあると思われる。

 図2に道路のII-1-4と施工計画のII-1-2の出題を示す。いずれもやや古い基準や法改正の内容についてで、当時は出題予測をして勉強していたものの、18年度での出題は想定外だったと思われる。

図2 ■ 18年度の道路と施工計画のII-1の出題

[道路]

II-1-4 平成27年に道路土工構造物技術基準が制定された背景を説明せよ。また、この技術基準のポイントを2つ挙げ、具体的に説明せよ。

[施工計画]

II-1-2 平成26年6月に改正された、いわゆる「担い手三法」について、法律の名称(略称可)を全て挙げ、これらが改正に至った背景を簡潔に説明せよ。また、このうち1つの法律について、主な改正点を2つ述べよ。

(3)選択科目II-2(記述式)

 専門知識と応用能力を問うII-2は、2問出題される。このうち1問を選んで、答案用紙2枚に解答する。一つひとつの出題の難度はそれほど高くない。最新情報や受験科目の定番となる課題を基に、出題された。

 しかし、応用能力は条件付きの専門知識なので、出題文に書かれた状況や数字といった条件に触れずに一般論で書くと、評価されない。

 図3に「施工計画」の出題を示す。II-2-1は道路の山側法面の崩壊を復旧する工事の内容をテーマにした出題である。ここでは、一般的な留意点以外に条件に触れる必要がある。論文中に「幅30m、高さ20m」の崩壊規模に対する記述がなければ、A評価にはならないであろう。選択科目II-2は一般論を書く出題ではない。与えられた条件に対する記述を求められるのが応用能力で、条件に触れることは必須である。

図3 ■ 18年度の施工計画のII-2

II-2-1 道路山側斜面が崩壊(幅30m、高さ20m)した災害の現場において、1車線の通行を確保しつつ、大型ブロック積み擁壁および、切り土・法面保護工(植生基材吹き付け工)などから成る復旧工事(下図参照)を施工するに当たり、以下の問いに答えよ。

(1)本工事の施工計画を立案する上で検討すべき項目を2つ挙げ、その内容について述べよ。

(2)本工事の施工中に安全管理上留意すべき項目を2つ挙げ、それが必要な理由と対応方法を述べよ。

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II-2-2 住宅街を通る幹線道路(幅員25m)の区域内に、15m四方、深さ30mのたて坑築造工事を、ソイルセメント地下連続壁による開削工法で計画している。当該箇所は、地下水位が高く軟弱地盤である。

(1)当該工事を実施するに当たって、周辺の環境に影響を与えると考えられる事象を3つ挙げ、それぞれについて着目した理由と事前に調査すべき項目を述べよ。ただし、騒音と振動は除くものとする。

(2)項で挙げた事象のうち2つについて、環境への影響の低減に有効と考えられる具体的な対策と施工管理上の留意点を述べよ。

 幅30mで高さ20mだと、極端に狭くて高い。掘削重機を容易には上げられない。幅が広ければ、斜路を設けることも可能だが、ここでは重機足場の検討も重要となる。

 II-2-2は、大規模土留めの出題だ。条件は、「住宅街の幹線道路(幅員25m)に15mの幅の土留めを構築すること」である。幹線道路なので、かなりの交通量が想定される。幅員25mの道路を15mも掘削する(必要な占用幅は恐らく最低17m)となると、残る道路幅員は4mずつの2車線程度。幹線道路のすぐそばを深さ30mまで掘削することが想像できる。影響度や留意すべき点が見えてくるはずだ。

 どの科目も大体このような傾向にある。ただ、業務遂行手順や留意点などは、自分の専門分野や経験分野でないと解答が難しい問題も少なくない。選択科目II-1と同様に、そもそも専門分野が狭い受験者は、2問中1問を選択できる程度に勉強範囲を広げておく必要がある。

(4)選択科目III(記述式)

 課題解決能力が問われる。2問のうち、1問を選択して用紙3枚に記述する。全体的にネタ切れ感があり、どの科目も防災や技術者不足、維持管理などの似たテーマでの出題が目立つ。科目ごとに分けて出題する必然性はなさそうな例もあった。

 図4はコンクリートの出題だ。選択科目IIIは1問しか解答しないので、題意を間違えると致命的だ。この出題では、昨今の就業者の高齢化や技術者不足に対して、生産性を向上させる策を記述させるものだ。多くの受験者が想定し、対策を取っていたと思われる。プレキャスト化や標準化の形状寸法、強度といったハード面と、積算基準などのソフト面に分けて記述するよう指定しているので、書きやすかったはずだ。

図4■18年度のコンクリートのIIIの出題

III-4 近年の建設業界では、就業者の高齢化や熟練技術者の減少などの問題が深刻化している。その中で、設計・施工技術などのハード面および仕組み作りなどのソフト面の双方で生産性の向上への取り組みが盛んに行われている。このような状況を踏まえ、以下の問いに答えよ。

(1)コンクリート構造物の建設において生産性を向上するため、あなたが重要と考えるハード面の技術的課題を1つ挙げ、重要と考える理由および解決策を1つずつ記述せよ。

(2)コンクリート構造物の建設において生産性を向上するため、あなたが重要と考えるソフト面の技術的課題を1つ挙げ、重要と考える理由および解決策を1つずつ記述せよ。

(3)上記(1)および(2)であなたが提示した解決策について、それぞれを適用した場合の効果と想定されるリスクやデメリットについて記述せよ。

 国土交通省も生産性革命としてi-Constructionを推進しており、コンクリート構造物のプレキャスト化や部材の標準化、それに伴う継ぎ手の開発などを進めており、まっとうな出題である。他の科目も、IIIではこのようなトレンディーな政策の出題傾向があり予測しやすいので、テーマを絞って準備することが重要だ。

 なお、総合技術監理部門の傾向と対策は、この連載に関連した情報を紹介するウェブサイト「技術士一直線増補版」の記事として掲載する。

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