2008年度から最新の17年度までの10年間に会計検査院から指摘された事例を構造物ごとに分析し、ミスの背景や原因をたどる。誤りやすいポイントをしっかり押さえて、単純ミスを減らすヒントを得てほしい。


示方書改定がターゲットに
  • 橋台・橋脚…15件
  • 落橋防止構造…9件
  • 変位制限構造…6件

 会計検査院の過去10年の指摘を構造物別に分類すると、最も多いのは橋で、全体の2割以上を占める。橋台や橋脚に関する指摘は15件に上り、そのうち9件が耐震補強工事の事例だ。

 耐震関係では、落橋防止構造と変位制限構造の指摘が近年増加。2017年度に土木工事で指摘があった13件のうち4件を占める。耐震補強に関するミスの主な要因は、12年度に改定された道路橋示方書についての理解が足りないことだ。

 橋台や橋脚では、耐震補強工事で橋座部の耐力や縁端距離が足りないといったミスの指摘が15年度に7件もあった。道路橋示方書の改定で、耐震設計の際に想定する最大の地震の規模が大きくなり、これに対応するため、橋脚の補強や支承の交換といった工事が増えたことが背景にある。

 これらの工事で、橋台の橋座部の強度が地震による水平力に耐えられないと指摘された事例が発生。橋座部に埋め込んだアンカーボルトから橋座部縁端までの距離が不足して、アンカーボルト前面のコンクリートにひび割れが生じやすくなっているミスなどが相次いで見つかった。

省略条件を勘違い

 落橋防止構造と変位制限構造のミスの増加も、示方書改定が背景にある。会計検査院国土交通検査第5課の岩田浩茂課長は、「12年度の道路橋示方書改定で橋軸方向の落橋防止構造を省略できる条件が拡大したため、この条件を誤解したミスが出てきている」と話す。

 以前は地震時に液状化の危険性がある砂質土層などで落橋防止構造を設置する必要があったが、改定後は上部工と下部工が橋軸方向にずれにくい構造や、支承部が壊れても桁が落ちない構造で省けるようになった。例えば、桁と剛結された橋脚が2基以上あるラーメン橋や、弾性支承または固定支承が橋軸方向に4基以上ある橋などが対象だ。

 落橋防止構造や変位制限構造の付け忘れは、川などを斜めに横切る「斜橋」で起こることも多い。斜橋は、地震時に支承が壊れると桁が水平方向に回転して落橋しやすい。特に、橋軸と支承の中心線が成す「斜角」が小さい橋では、変位制限構造を設置する義務がある。

 17年度に指摘を受けた和歌山県の耐震補強工事では、斜角が小さい橋なのに、支承の耐震性能が変位制限構造と同等であったため、変位制限構造を省略できると誤解していた(「橋 勝手に変位制限構造を省略」に事例解説)。

定番化した設計変更のミス

 設計変更や担当者の異動などの際に必要な情報が伝達されず、ミスが起こることも頻繁にある。

 16年度の検査では、鳥取県が橋台の胸壁で設計ミスの指摘を受けた。上部工の設計時に落橋防止構造の位置を変えたことを、下部工の設計者に伝えていなかった。

 この橋では、桁端部と橋台の胸壁をプレストレスト・コンクリート(PC)鋼材で結び付ける落橋防止構造を採用していた。上部工の設計時に落橋防止構造が桁端部の横締め鋼材の位置と重なることが分かったため、落橋防止構造のPC鋼材9本を上部に移動させた(図1、写真1)。鋼材の位置が橋座面から離れるほど、橋桁から胸壁にかかる力が大きくなるので、胸壁の設計を見直す必要があった。

図1 ■ 落橋防止構造の概念図
2016年度に指摘を受けた鳥取県の槇原橋の構造。PC鋼材の位置を上方にずらすと、胸壁にかかるモーメントが増大する。図は会計検査院の資料を基に日経コンストラクションが作成
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写真1■ 手直し後の槇原橋。橋台の胸壁の設計が不適切とされた(写真:鳥取県)
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