[事故・トラブルの概要]
新潟県が建設を進めている奥胎内ダムで、試験湛水の際に放流を3日間中断したため、下流の河川が干上がって魚が大量死した。湛水中も最低限の水は流す規則になっていたが、短期間なら止めても大丈夫だろうと、出先事務所が安易に判断していた。

 胎内川が干上がっている――。2018年10月2日、渓流釣りで現地を訪れた人から匿名で、新潟県にこんな電話があった。上流に建設中の奥胎内ダムでは前月25日から、水をためて問題がないかを調べる「試験湛水(たんすい)」を始めていた。開始から3日間、放流を完全に止めたことが原因と考えられた(写真1)。

写真1 ■ 新潟県胎内市に建設した奥胎内ダム。堤体の中央付近の常時洪水吐きにはゲートを設けていない。試験湛水前の2018年9月11日撮影(写真:新潟県)
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 しかし、既に放流を再開しており、県は大きな問題とは捉えていなかった。深刻な状態に気付いたのは10月4日。県に通報したと思われる人のツイッターで、魚が死んでいるとの投稿があるのを知ったときだ。

 職員が急いで現地に足を運ぶと、魚が大量に死んでいるのが目に入った。翌5日に詳しく調査すると、ダム直下から頼母木(よもぎ)川との合流地点までの1kmの区間で、イワナとカジカ計1031匹が死んでいるのが確認された(図1写真2)。

図1 ■ 事故の経緯
(資料:新潟県の資料と取材を基に日経コンストラクションが作成)
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写真2 ■ 2018年10月5日に撮影した奥胎内ダムの下流域の様子。既に放流は再開していた(写真:新潟県)

 本来、湛水中でも川の生物などを守るため最低限必要な「維持流量」の水は流さなくてはならない。県が策定した湛水計画では、毎秒0.223m3の水を放流することになっていた。しかし、ダム建設を担当する新潟県新発田地域振興局の奥胎内分所が、その規則を守っていなかった。

 ダム堤体に設けた取水口がダム湖の底よりも高い位置にあるため、試験湛水の開始から数日間は、水を自然流下させることができない(図2)。当初の計画ではその間、ポンプで取水口まで水をくみ上げて維持流量を流すことになっていた。

図2 ■ 奥胎内ダムの横断面模式図
(資料:新潟県)
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 奥胎内分所と県本庁の河川整備課が試験湛水に向けて状況を確認したところ、18年9月の台風などもあり、かなりの量の流木が流れて来ることが予想された。スクリーンで排除できない細かな枝などが導水管に入り込み設備を傷める恐れがある。取水口のゲートを閉めた状態で、維持流量を流す方策が求められた。

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