低消費電力で広い範囲に無線で通信できるLPWA(ローパワー・ワイドエリア、省電力広域無線通信)。人に代わりセンサーがインフラを監視する時代の到来で、現場での情報を人がいる遠隔地に「送る」IoT技術が不可欠となった。インフラの維持管理、施工管理などでLPWAが導入され始めている。

1.岩石監視
辺ぴな場所のインフラを「遠隔点検」

 鉄道や道路のような線状に連なる構造物。その維持管理には多大な人員と費用を要する。人や物を運ぶという特性上、人が住まないような辺ぴな場所でもインフラを通す必要があり、異常時には現地へ確認に行くだけでも一苦労だ。

 そんななか、ジェイアール西日本コンサルタンツは、鉄道沿線の斜面の岩石に加速度センサーを付け、LPWAを使って遠隔で岩石の状態を監視する「落石管理システム」を開発した(写真1、図1)。岩石の健全性の情報を常時、通信できる。地震や大雨の直後に危険な斜面の巡回などの手間を省けると期待されている。

実証実験で、鉄道沿線の斜面上にある岩石に取り付けたセンサーの試作機。加速度計やバッテリー、通信装置などを内蔵している(写真:ジェイアール西日本コンサルタンツ)
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小型化に成功した量産試作機(写真:ジェイアール西日本コンサルタンツ)
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写真1
図1■落石管理システムの概要
(資料:ジェイアール西日本コンサルタンツ)
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 特徴は、「Low Power Wide Area」の頭文字から成るLPWAを採用した点にある。消費する電力を抑えつつ、遠距離まで通信が可能な技術だ。見通しが良ければ数十キロメートルまで通信できるといわれる。山や木、建物などの遮蔽物がある場合でも、数キロメートルの範囲であれば通信が可能だ。ジェイアール西日本コンサルタンツが2017年12月から実施している実証実験によると、田舎の斜面にある岩石に設置したセンサーから、3kmほど情報を送信できた。

 「落石の恐れがあるような場所は人が住んでいないケースがほとんどで、携帯電話の電波が届かない。そこで、電波の通じる駅に基地局を設置して、エリア外の通信をLPWAでカバーする。駅に基地局を立てれば、大体の線路は監視可能だ」。同社ITシステムデザイン部システム&テクノロジーグループの向井雅俊課長代理はこう説明する。

 実証実験では、携帯電話の通信エリア内である最寄りの無人駅に基地局を仮設。そこまでLPWAで通信し、基地局から携帯回線を使用して、関係部署などに通知した。

ノーメンテナンスで5年間持たせる

 もう1つの売りが、「長持ち」だ。山奥や田舎に設置する以上、メンテナンスやバッテリーの交換で頻繁に現地に行くという状況は避けたい。

 「監視と送信の機能を内蔵電池で5年間は持たせたかった。携帯電話で普及している高速通信が可能なLTEなどでは、大量の電力を消費するので長く持たない。電池を積めばいいが、その分センサーが大きくなってしまう」(向井課長代理)。

 LPWAは、わずかな容量しか情報を通信できない分、電力の消費量を抑えられる。センサーのバッテリーは、4~5年程度稼働するめどが立っている。センサーは1時間に1回の頻度で情報を通信する。異常を検知した場合はアラートを発信し、通信頻度を上げるよう遠隔地から操作することも可能だ(図2)。

図2■落石管理システムの画面のイメージ
計測した傾きの累積情報を時系列で見ることができる(資料:ジェイアール西日本コンサルタンツ)
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 ジェイアール西日本コンサルタンツが利用するLPWAは、京セラコミュニケーションシステムが事業者となって国内でサービスを提供する「Sigfox(シグフォックス)」。送信量の上限は12バイトと少ないが、傾きや衝撃などの情報であれば、その程度で全く問題ない。

 1日の最大送信回数にも制限がある。その一方で、通信費の安さに特化した。契約回線が100万回の場合、1日2回の送信でセンサー1個当たりの通信費は年間100円を切る。複数箇所に設置しやすくなり、土砂災害などの監視にも使えそうだ。

 ジェイアール西日本コンサルタンツは、砂防や火山での地盤の監視などでも実証実験を進める予定だ。

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