生産性向上に新技術の追い風

建設現場

2019/01/10 03:00
青野 昌行=日経 xTECH/日経コンストラクション、安藤 剛=日経 xTECH/日経コンストラクション、谷川 博=日経 xTECH/日経コンストラクション、長谷川 瑤子=日経 xTECH/日経コンストラクション、三ケ尻 智晴=日経 xTECH/日経コンストラクション
出典: 特集 土木躍進キーワード50,日経コンストラクション、2019年1月14日号 ,pp.38-43 (記事は執筆時の情報に基づいており,現在では異なる場合があります)

建設現場のデジタル化が止まらない。国土交通省が建設業の生産性向上を目的に進めるi-Constructionが浸透し、新技術の開発が活発になってきた。AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)を得意とする異業種の会社と連携し、現場の作業を抜本的に変える試みが動き出している。

01. 建機の自動化
AI搭載で環境の変化にも対応

 無人のダンプトラックとブルドーザー、振動ローラーが自ら考え、連係してダムを造り上げる──。そんなSF小説に登場するかのような建設現場が、現実になりつつある。鹿島は2018年11月、同社JVが担当する福岡県内の小石原川ダムの本体工事で、ロックフィルダムの遮水層を築く作業を自動化してみせた。

 鹿島の次世代建設生産システム「A4CSEL(クワッドアクセル)」は、タブレット端末を通じて遠隔で建機に指示を出すだけで、土砂の搬送からまき出し、転圧までの一連の作業を可能にする(写真1)。同社は自動化技術のさらなる進歩に向け、18年3月にコマツ、理化学研究所とAI(人工知能)の搭載に向けた共同研究を開始すると発表した。環境の変化に対応する高度な自律機能を組み込む狙いだ。

写真1■ 搬送から転圧までの一連の作業を自動化する「クワッドアクセル」。成瀬ダム(秋田県東成瀬村)の建設工事で、堤体打設に20〜30台の自動建機を導入する計画もある(写真:鹿島)
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 他の建設会社も独自の自動化技術を打ち出している。例えば、熊谷組は無人化施工をベースにした建機の自動化システムを開発し、熊本地震の被災地で実験を重ねている。

 フジタが東京大学発のAIベンチャー、DeepXと共同で開発したのが、熟練オペレーターの動作を学習したバックホーの自動操作システムだ。搭載したカメラの情報からバックホーの位置や姿勢を推定し、運転席にある操作レバーをモーターで動かして土を掘る。現時点では土に埋まった大きな石などへの対処が難しいものの、今後、AIの学習量を増やしていけば対応できるようになるという。

異業種の技術を取り込む

 国土交通省が推進する建設業の生産性向上策「i-Construction」は19年で4年目を迎える。同省が普及を進めてきたICT(情報通信技術)土工の実施件数は17年度の直轄工事で815件で、前年度から4割増えた。

 今後は自動建機やロボット、AIなどの技術開発で異業種との連携も加速する見通し。国交省は18年10月に、「建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト」として、異業種の会社と建設系企業で構成するグループからの提案33件を採択。技術の導入費用を補助したうえで、活用効果を検証していく。

 20年に第5世代移動通信システム(5G)のサービスが始まれば、自動化技術はさらに進化するとみられる。5Gの通信速度は前世代の4Gの20倍近くに向上するため、映像などの大容量データをリアルタイムで伝送できるようになる。高精細な4Kカメラの映像を見ながら重機の遠隔操作が可能になるとして、実用化に期待がかかる。大手建設会社は5Gを提供する携帯電話会社との提携に動き始めている。

[新技術の導入] 効率化の実感が普及への近道
土木研究所技術推進本部 先端技術チーム 上席研究員 新田 恭士(写真:日経コンストラクション)
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 建機の自動化や無人化施工は、高精彩なカメラや画像解析の技術との組み合わせによって目まぐるしい進化を遂げている。一方で、現段階では現場作業を全て機械で置き換えるのは難しい。人による作業を残す部分と機械化する部分を適切に分ける「ベストミックス」を目指すべきだ。

 建設現場で新技術の導入を加速させるには、施工者が効率的な仕事の進め方ができるように、発注者が柔軟に対応する姿勢が重要になる。

 例えば、現場に複数のネットワークカメラを設置して施工中の様子を記録する「映像CIM」を使えば、施工途中の立ち会い検査を省略できる可能性が高い。発注者は現場に出向く時間を省略できるし、施工者は検査のために作業を中断しなくて済むので、双方の生産性を上げられるようになる。しかし、従来の検査のやり方に縛られていては、その効果を実感できない。

 人手不足が深刻化するなか、「技術はあるのに現場では使えない」という状況に甘んじてはいられない。発注者側は、新技術を実証できるフィールドを積極的に提供していく必要がある。(談)

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