2018年9月の台風21号による越波で“水没”した関西国際空港で、総額541億円を投じた対策工事が始まった。50年確率の設計波を見直し、護岸をかさ上げする。延長4kmの東側護岸は1.7mかさ上げするとともに、前面に消波ブロックを設ける。

270万m3の浸水量を1万m3に抑制

 大阪湾の5km沖合を埋め立てて1994年に開港した関西国際空港の1期島。滑走路に並行する延長4kmの東側護岸の上部に無数の“木箱”が一定間隔で並ぶ。護岸をかさ上げするために打設するコンクリートの型枠だ(写真1~3)。

写真1■ かさ上げ工事が始まった関空1期島の東側護岸をオイルタンカーバースから見る。1日当たりのコンクリート打設量は100m3ほど。2020年度から護岸前面に消波ブロックを設置する工事も始まる(写真:日経コンストラクション)
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写真2■ 航空機が離発着する滑走路のそばで施工する。1期島は現在も洪積層の圧密が続き、年間6cmほどのペースで沈下している(写真:日経コンストラクション)
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写真3■ 東側護岸は緩傾斜石積み護岸の上部にコンクリートを据え付けた構造。既設護岸の目地間隔に合わせて、かさ上げするコンクリートを打設していく(写真:日経コンストラクション)
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 護岸と滑走路とは100m余りしか離れていない。コンクリートを圧送するポンプ車の“うなり声”や作業員の掛け声は、離発着する航空機のエンジン音にかき消されてしまう。

 施工するのは東亜建設工業。同社は2019年3月、コンセッション方式で関空を運営する関西エアポートから、東側護岸のかさ上げ工事を受注した。工期は21年3月までだ。

 「航空機の障害とならないように、ポンプ車のブームは高さ24mまでしか上げられない」。東亜建設工業で監理技術者を務める樺沢健一郎氏はこう話す。雨や霧などで視界が悪くなると制限はさらに厳しくなり、地表から高さ6m以内でしか作業できない。シートなどの資材が滑走路や海に飛んでいかないように、細心の注意を払いながら施工している。

歯抜け状に打設してひび割れ防ぐ

 工事はまず、既設護岸の海側にブラケットで足場を組む。次に、護岸の天端を目荒らしした後、差し筋を取り付ける。護岸の既設部とかさ上げ部を一体化するためだ。その後、型枠を組み立て、コンクリートを3層に分けて打ち重ねる(写真4)。

写真4■ 主な施工手順。既設護岸の天端を目荒らしして(左上)から、差し筋を取り付ける(右上)。その後、型枠を歯抜け状に組み立ててコンクリートを打設(右下)。コンクリートが硬化すると、残りの部分に型枠を取り付けて(左下)コンクリートを再び打設する(写真:日経コンストラクション)
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 かさ上げする護岸の型枠を歯抜け状に間隔を空けて組み立てるのは、コンクリートの温度ひび割れを防ぐためだ。

 打設後のコンクリートは水和反応で温度が上昇する。その後、温度が下がる際にコンクリートが収縮。このとき既設の護岸に収縮を拘束されると、かさ上げ部のコンクリートに引張力が作用してひび割れが生じる。コンクリートの打設範囲を細かく区切ることで、温度変化や拘束を抑え、ひび割れの発生を防ぐ。

 コンクリートの強度は21N/mm2で、スランプは10cm。護岸は無筋コンクリート構造となっている。

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