総重量7000t超のアーチを載せた多軸台車が、地組みヤードに横付けした台船にそろりと乗り込む。2020年東京五輪の競技会場に架かる橋は、珍しい架設方法を採用した。五輪のランドマークの1つとして、現在は静かに出番を待っている。

バラストタンクから排水して台船の高さを保つ

 東京港沖合の2つの埋め立て地に挟まれた幅約200mの東西水路。2020年東京五輪でボートやカヌーの競技会場となるこの水路に18年8月、長さ249.5m、幅34.3mのアーチ橋「東西水路横断橋」が架かった。

 アーチ部材と補剛桁との間を斜めに張ったケーブルでつなぐ構造で、厳密には鋼単純ニールセンローゼ橋と呼ばれる。コンテナ貨物を運ぶトレーラーなどの混雑緩和を目的に整備が進む臨港道路南北線の一部として、東京都が発注した。美しい姿を五輪で世界にお披露目できるまで、現在は静かに出番を待っている。

 東西水路横断橋は珍しい架設方法を採用したのが特徴だ(写真1、2)。

写真1■ 巨大なアーチを載せた多軸台車が、写真右手の地組みヤードから台船の上に移動する。2018年8月15日撮影(写真:大村 拓也)
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写真2■ 東西水路に浮かぶ台船と護岸の間に架けた「ランプウエー」を、多軸台車は約2時間で渡りきった。平均移動速度は毎分35cm程度。載荷に応じて台船からバラスト水を排水しているものの、写真1と比べて台船がアーチなどの重みで沈み込んでいるのが分かる。アーチの写真手前がA1橋台側。写真左奥に東京ゲートブリッジが見える(写真:大村 拓也)
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 架設地点から西に約400m離れた東西水路の脇で地組みしたアーチの鋼重は6230t。仮設の治具などを含めると、総重量は7000tを上回る。

 橋を海上で一括架設する場合、通常は地組みした桁を起重機船で吊り上げてヤードから台船に移し、架設地点まで運ぶことが多い。ところが、「東西水路は水深が4m程度と浅く、大型の起重機船が使えない。浚渫して水深を確保するには、ヤード脇の護岸への影響を考慮する必要があった」と、東京都港湾局東京港建設事務所の柳井健二道路整備担当課長は説明する。遠隔地から台船に載せて運んでくる方法もあるが、東西水路の入り口付近にある防波堤が台船の航行の妨げになった。

 さらに、もう1つ大きな制約があった。東西水路は羽田空港の滑走路の延長線上に位置する。航空機が離発着する時間帯は、高さ約70mより上空にブームなどを伸ばせない。まして高さが100mを超える大型の起重機船は利用困難だった。

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