堤防などのハード対策だけでは限界があるとして、国土交通省がソフト重視へとかじを切った「水防災意識社会の再構築」を打ち出したのが2015年12月。それから2年半が過ぎた今年7月、西日本豪雨で再び、多数の犠牲者を出した。いったい、これまでの対策に何が足りないのか。理念だけにとどまらない実効性のある施策が求められている。
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堤防などのハード対策だけでは限界があるとして、国土交通省がソフト重視へとかじを切った「水防災意識社会の再構築」を打ち出したのが2015年12月。それから2年半が過ぎた今年7月、西日本豪雨で再び、多数の犠牲者を出した。いったい、これまでの対策に何が足りないのか。理念だけにとどまらない実効性のある施策が求められている。
「空振りを恐れるな」ではどうにもならない現実
「なぜダムの放流を事前に教えてくれなかったのか」、「被害のイメージが湧けば、もっと早く行動できたはず」──。西日本豪雨で水害に見舞われた住民からは、こんな声が上がっている。
河川の氾濫の危険性を従来よりもきめ細かく予測する試みが、今年7月から国管理の3河川で始まっている。国土交通省が荒川(東京都など)、山国川(大分県など)、川内川(鹿児島県など)に導入した「水害リスクライン」だ。
今後の治水対策の進捗に応じて見直し
西日本豪雨への対応を巡り、住民らの厳しい目にさらされているのがダムだ。愛媛県を流れる肱川の野村ダムや鹿野川ダムでは、放流の影響で下流域が氾濫し、大規模な浸水被害が発生した。
小田川と支流3河川、緊急対策が積み残した課題
岡山県倉敷市の真備町を流れる高梁川水系小田川と支流の3河川の堤防は、西日本豪雨によって計8カ所で決壊した。浸水の範囲は東京ドーム約260個分の1200haに及んだ。
国交省の小委員会で審議開始、来年度予算で増額要求
国土交通省は西日本豪雨を受けて、社会資本整備審議会で新たに水害対策の審議を開始する。河川分科会の小池俊雄分科会長(土木研究所水災害・リスクマネジメント国際センターセンター長)を委員長とする「大規模広域豪雨を踏まえた水災害対策検討小委員会」を設置した。9月28日に審議を開始し、年内に提言をまとめる予…