国土交通省の施策を批判したことで同省から圧力を受け、辞任に追い込まれた――。建設コンサルタント会社の元社長がこう主張して国に損害賠償を請求した訴訟で、東京高裁は2019年4月10日、一審判決を覆す元社長の逆転勝訴の判決を出した。元社長を辞任に追い込んだ国交省の圧力は実際にあったと認定。法令の根拠がないばかりでなく憲法にも適合しないと結論付けた。

 訴えていたのは地域開発研究所(RDC、東京都台東区)元社長の島崎武雄氏。旧運輸省港湾局などに勤めた後、1983年に港湾関連の業務を主力とするRDCを設立し、社長に就任した。しかし2009年6月に辞任して代表権を持たない会長に就任し、さらに10年9月に会長も辞任して退社した(写真1)。

写真1■判決後の会見に臨む島崎武雄氏(写真右)と代理人の海渡雄一弁護士(写真:日経コンストラクション)
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 東京高裁の判決は、この一連の人事がRDCに対する国交省の圧力によるものだとして、島崎氏が主張する国の賠償責任の一部を認め、約530万円の支払いを国に命じた。

公益法人問題で前原誠司氏に協力

 島崎氏はかつて、天下り先とされる公益法人に国交省が建設コンサルタント業務を随意契約で発注していることを問題視。公益法人があるために、民間企業が国交省発注の一部の業務で、下請けの立場でしか受注できないと不満を抱いていた。

 一方で政界では、民主党(当時)の前原誠司衆院議員が08年に旧建設省系の公益法人である建設弘済会の問題を国会で取り上げるなど、公益法人に関して国交省を盛んに追及していた。

 そこで、島崎氏は公益法人問題の資料として09年1月ごろ、旧運輸省系の公益法人で当時RDCを下請けとしていた港湾空間高度化環境研究センター(WAVE、現・みなと総合研究財団)との取引に関する文書などを前原議員に提供した。

 島崎氏はさらに、歴史的な土木施設である東京湾の人工島「第二海堡(かいほう)」の保存運動にも関わっていた。同氏が事務局長を務めていた民間団体「東京湾海堡ファンクラブ」は10年7月、改修工事で破壊しないよう同省関東地方整備局に保存要望書を提出した。関東地整は今でこそ観光資源として第二海堡の活用を図っているが、当時は保存に消極的だったという。

 島崎氏は、こうした活動に反発した国交省が公共事業の受注者であるRDCに直接、またはWAVEなどを介して間接的に圧力をかけたことで辞任や退社に追い込まれたと主張。国に賠償を求める訴訟を15年10月に、東京地裁に提起した。

一審が認めた時効を否定

 訴えを起こされた国交省は、島崎氏の辞任はRDC内部の経営判断によるなどと反論して、「圧力」を否定した。東京地裁は17年9月に出した一審判決で、国交省の圧力の有無を判断せず、島崎氏の損害賠償請求権は提訴前に時効で消滅していたとして訴えを退けた。

 しかし東京高裁は、一審判決で島崎氏に損害賠償請求権があったとされた10年9月からの3年間、同氏は具体的に国交省の誰がRDCに圧力をかけたのかが分からなかったため、訴訟を起こせない状態だったとして時効を否定した。

 島崎氏は、訴訟で代理人となる海渡雄一弁護士の助言を受け、14、15年にRDCや関東地整の幹部に面会して「圧力」の発生源を調査。圧力をかけたのは国交省の港湾局と関東地整のそれぞれの幹部だったと特定した。

 東京高裁は、島崎氏を社長辞任と退社に追い込んだ国交省の圧力を認定し、民間企業の経営に対する法令の根拠がない介入であると断定した。特に第二海堡の保存要望を理由に退社に追い込んだことを、国などに請願をしたために差別待遇を受けることはないとする憲法16条を無視する行為と結論付けた。

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