富士山噴火に備えたハード整備が始まったのは2018年度からだ。国土交通省は46年度までの約30年間で総事業費890億円を投じ、噴火による土砂災害を防ぐための堰堤などを造っていく。

 富士山の砂防事業は従来、大雨に伴う土石流などへの対策が中心だった。主な対象は山体の西側にある「大沢崩れ」と呼ばれるエリアだ。最大幅500m、深さ150mの浸食谷で、現在も大量の土砂を生み出している。

 「動き出した富士山噴火対策」で取り上げた現場近くの潤井川も大沢崩れを源流とし、過去の大雨で土石流が何度も発生。上流部に堰堤などが造られてきた。

 富士山の噴火対策が差し迫ったものとして認識されるきっかけとなったのは、2000年から01年にかけて多発した富士山直下を震源とする低周波地震だ。1707年の「宝永の大噴火」以降に大規模な噴火が起こっておらず、地下に蓄えられた大量のマグマが噴出すれば、被害が広範囲に及ぶ可能性があると指摘された。

 さらに、14年には長野・岐阜両県にまたがる御嶽山が噴火して、登山者ら約60人が死亡する戦後最悪の火山災害が発生。火山ごとに噴火シナリオや避難計画の作成を求める改正活火山法が15年に施行した。

 こうした中で、国交省と山梨県、静岡県は18年3月、「富士山火山噴火緊急減災対策砂防計画」を作成。具体的な噴火対策が動き出した。

沈砂地で土砂捕捉量を倍増

 同計画では、富士山の噴火に伴う土砂移動現象として、「降灰後の土石流」「融雪型火山泥流」「溶岩流」の3つに絞り込んで対策を進める(図1)。降灰後の土石流は発生頻度が高く、砂れきによる破壊力も大きい。融雪型火山泥流は発生頻度が低いものの、流下速度が速く避難が難しい。溶岩流は流下速度が遅いが、市街地に到達すると深刻な被害を与える。

図1■ 3つの現象を想定して対策する

 降灰後の土石流 

降り積もった火山灰が雨とともに川などを流れ下る現象。写真は1991年の雲仙普賢岳の噴火で市街地まで達した降灰後の土石流(資料:国土交通省富士砂防事務所)
茶色で示した部分が、降灰後10年間に繰り返し発生する土石流の想定影響範囲。△は富士山頂。図の赤丸は最初に取り上げた南麓砂防設備工事の現場(資料:国土交通省富士砂防事務所)
[画像のクリックで拡大表示]

 融雪型火山泥流 

火砕流などの熱で斜面の雪が解け、大量の水が土砂を巻き込みながら高速で流下する現象。写真は1926年の十勝岳の噴火で発生した火山泥流。死者・行方不明は144人に上った(資料:国土交通省富士砂防事務所)
過去最大と同規模の火砕流が発生した場合の融雪型火山泥流の想定影響範囲。ピンク色が火砕流、水色が融雪型火山泥流の流下範囲(資料:国土交通省富士砂防事務所)
[画像のクリックで拡大表示]

 溶岩流 

溶岩が流れ下る現象。速度は遅いが、高温・高密度で住宅や構造物に大きな被害をもたらす。写真は1983年の三宅島の噴火で溶岩流にのみ込まれた小学校(資料:国土交通省富士砂防事務所)
ピンク色で示した想定火口範囲から溶岩流が最速で到達する範囲。大規模、中規模、小規模噴火のそれぞれの想定を重ね合わせたもの(資料:国土交通省富士砂防事務所)
[画像のクリックで拡大表示]

この先は有料会員の登録が必要です。「日経コンストラクション」定期購読者もログインしてお読みいただけます。有料会員(月額プラン)は初月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら