日本にとって節目の年となる2020年に流行する技術を、1年先取りして、どこよりも早く予測した。デジタルの時代は技術の重要性がこれまで以上に高まっていく。2020年に進化を遂げる20の本命技術と、今知っておきたい20の有望技術をお届けする。

監視カメラとAI、東京五輪をテロから守る

 2020年9月6日、1カ月半にわたって開催された東京オリンピック・パラリンピックの全日程を終えた時、人々は感動の余韻に浸る。その時、テロや犯罪の暗い思い出は一切ない。監視カメラ映像とAI(人工知能)を組み合わせた監視システムが人知れず犯罪を未然に防いでいたからだ――。

 監視カメラは近年、都心部の繁華街を中心に普及が進む。東京五輪では多数の観客が会場周辺に押し寄せ、選手や国内外の要人なども狭いエリアに集まる。警備強化に向けてIT企業はAIで監視力を一段と高める。

 例えばNECは大会関係者約30万人を対象に、競技エリアや選手村などの入場ゲートでIDカードと顔認証を組み合わせた認証システムを設置・運用する予定だ。ゲートのICカードリーダーでIDカード内のICチップを読み取って入場しようとする人物を特定する。同時に、あらかじめ登録してある顔写真とゲート前に立つ本人の映像とを照合し、IDカードの貸し借りや盗難によるなりすましを防ぐ。

五輪準備で映像解析に磨き
NECが試作した東京オリンピック・パラリンピックの選手・関係者認証ゲート(写真提供:NEC)
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 顔認証技術に使った犯罪防止技術は五輪会場以外にも広がる。NTT東日本はAIベンチャーのアースアイズと共同で、商業施設向けの万引き防止AIシステムを2018年5月から提供中だ。来店客が店内の同じ場所を行き来する、辺りをうかがうなどの不審な行動をカメラが捉えると、警備員のスマートフォンに通知を送る。

量子コンピューターの悪用を防ぐ暗号技術が進化

 従来型コンピューターを大きくしのぐ演算速度を持ち、物流や創薬など様々な分野の問題を解決すると期待を集める量子コンピューター。2020年にも本格利用が始まり、人手不足や医療費高騰に歯止めがかかる。

従来型コンピューターを超える
米IBMのゲート型量子コンピューター「IBM Q」の素子部分(写真提供:米IBM)
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 ただその前に越えなければいけない壁がある。量子コンピューターの乱用を防ぐための倫理基準や規則の整備だ。2019年はその議論が始まる。

 量子コンピューターが脅威となる代表例は公開鍵暗号の解読だ。公開鍵暗号は従来型コンピューターが大きな数の因数分解に時間がかかる点を利用して解読を困難にしているが、量子コンピューターだと簡単に解けてしまう。実際、因数分解を高速に解くアルゴリズムが既に開発されている。

 解読されれば電子署名や仮想通貨などの仕組みが意味をなさなくなる。量子コンピューターの現在の処理能力は汎用的な用途に使う「ゲート型」で50量子ビット程度であり暗号解読には至らないとされるが、より多ビットになる2020年代前半に脅威が現実になる。

 そこで量子コンピューターでも高速演算が難しい「量子耐性」という指標に着目して、新たな対策技術の開発が進んでいる。暗号技術については、量子コンピューターが苦手な「最短ベクトル問題」を使った「格子暗号」の国際標準化が始まった。デジタル社会を支える暗号技術をどう守るか、全ての企業にとって他人事ではない。

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