失敗の原因を究明せよ─。IT業界ではこの言葉をよく耳にする。だが、多くの場合は「犯人捜し」に終始して、幕引きとなる。これではいつまでたっても失敗の本質に迫れない。

 2018年に発生した「日大アメフト事件」を覚えている方は多いだろう。日本大学と関西学院大学によるアメリカンフットボールの試合で、ボールを持たない関学の選手に日大の選手が背後からタックルした。審判が立ち会い、多くの観客が見守るなかで起こった反則行為だった。タックルした選手はこの試合で計3回の反則を犯し、退場処分となった。

 反則行為の動画はSNSで広がり、多くのメディアが取り上げた。「黒幕は誰か」と報道は過熱し、元監督や元コーチ、学長らが謝罪。第三者委員会が調査に乗り出す事態に発展した。第三者委員会は、悪質タックルが元監督や元コーチの指示によるものだったと結論付けた。

原因究明は犯人捜しとは違う

 ここで事件の真相や報告書の内容の是非を問うつもりはない。筆者が問題にしたいのは、何らかの事件やトラブルが起こった際にすぐ犯人を捜し、特定したらそれで幕引きにする風潮である。冒頭の事件に限らず、日本の企業や組織でよく見られる光景ではないだろうか。筆者が所属するIT業界も例外ではない。

 失敗の原因を究明せよ─。IT業界に限らず、マネジャーなら一度はこの言葉を聞いたことがあるだろう。日本の企業や組織は、この要求を「失敗の犯人を突き止めろ」と解釈してしまいがちだ。

図 日本の組織における誤った失敗追究の例
「犯人捜し」にこだわる
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 事件やトラブルといった失敗の原因を究明するために、責任者を明確にする必要はあるだろう。だからといって失敗の原因究明イコール犯人捜しだと考えるのは誤解だ。犯人を特定するだけでは失敗の真因にたどり着かず、同じ失敗を繰り返す羽目になりかねない。これでは「失敗に学ばない組織」になってしまう。

 IT企業でプロジェクトマネジメントなどを務める筆者も5年ほど前まで、この点について誤解していた。筆者はNPO法人の失敗学会にも所属しており、自らの経験を踏まえて犯人捜しではない原因究明の進め方を模索してきた。

 今回から始まる集中連載ではその成果を基に、組織はなぜ失敗に学ばないのか、状況を打開するために何をすべきかを中心にお伝えする。初回は失敗の本質を究明するのがなぜ難しいかについて取り上げる。

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