ITプロジェクトの失敗原因を究明しようとすると「犯人捜し」に陥りがちだ。そうした事態を避け、真因にたどり着くために「成功曼荼羅図」の活用を勧める。参加メンバーが議論しつつ、5つのステップで原因究明を進めていく。

 この連載は組織がなぜ失敗に学ばないのか、状況を打開するために何をすべきかについて失敗学の成果を基に解説している。第1回(2019年1月10日号)は日本の企業や組織がなぜ失敗の原因究明を「犯人捜し」と捉えるのか、第2回(同2月7日号)はIT業界がプロジェクトの失敗につながる根本的な問題をなぜ解決していないのかについて取り上げた。

 今回と次回は対策編だ。前回紹介した「ITプロジェクト版 成功曼荼羅(マンダラ)図」を活用して、真因を究明する手順を紹介したい。

 成功曼荼羅図は失敗の真因を究明するツールだ。ある企業が成功曼荼羅図を活用したところ、「失敗原因の根幹はこんなに単純だったのか」と驚いたそうだ。「失敗を振り返ったメンバーの腹に初めて落ちた」と筆者に報告してくれた。その後はプロジェクトで同じ失敗を繰り返さないようになったという。

 成功曼荼羅図を使って失敗の真因を究明し、事例として蓄積するとともに公開していく。この作業を積み重ねていけば組織と社員が失敗を繰り返さずに、生き生きと活動できる企業文化を育める。筆者はこう確信している。

図 ITプロジェクト版の成功曼荼羅図
失敗の原因を4種類に分類
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失敗の原因を一覧可能に

 失敗の原因究明プロセスを説明する前に、そもそも成功曼荼羅図は何を表しているのかについて改めて触れておこう。

 筆者が所属する失敗学会は失敗の原因を構成する要素を分類して、要素同士の関連を階層ごとに図示した「失敗まんだら」を提唱している。仏教における悟りの世界や仏の教えを示した図絵である曼荼羅にヒントを得て、失敗原因に関わる全ての要素や関連、位置づけを一覧できるようにした。

 ITプロジェクトで発生した失敗について、失敗まんだらを基に原因の構成要素と関連を一覧できるようにしたのが成功曼荼羅図だ。全体を大きく(1)個人に関わる原因、(2)プロジェクトに関わる原因、(3)組織に関わる原因、(4)未知の原因の4種類に分けている。図の左上の領域が(1)、右上が(2)、真下が(3)、左下が(4)をそれぞれ表す。

 その上で失敗の原因を2つのレベルで表す。上位の第1レベルは以下の10項目である。

<個人>

無知:世の中に知られている解決法を本人が知らない

不注意:十分配慮していれば防ぐことができる注意を怠る

誤判断:状況を正しく捉えられない、または思い違いなどで判断を誤る

手順の不順守:約束事や習慣・規則を守らない

<プロジェクト>

企画・計画不良:企画や計画そのものに問題がある

調査・検討不足:決定に至るまでの検討が不十分

プロジェクト運営不良:プロジェクト運営の体制や手順がきちんと物事を進められる形になっていない

<組織>

環境変化への対応不良:当初想定した条件が変化しているのに対応が不十分

価値観不良:価値観が周囲と食い違っている

<未知>

未知:誰も知らない事象が発生

 成功曼荼羅図は第1レベルの原因を詳細にした第2レベルの原因も示している。「無知」であれば「経験不足」と「引き継ぎ不良」など、「企画・計画不良」であれば「重要性認識誤り」と「スコープ不良」、「見積もり不良」などが第2レベルだ。内容は想像できると思う。

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