IT業界におけるプロジェクトの失敗は今も多く見られる。失敗を減らすには真の原因の追究が欠かせない。ただ、失敗データベースなどの取り組みには落とし穴がある点に注意が必要だ。

 失敗の原因を究明せよ─。IT業界に限らず、この言葉を聞いた経験がないマネジャーはいないだろう。日本の企業や組織はこの要求を「失敗の犯人を突き止めろ」と同じ意味に捉えてしまいがちだ。だが犯人を特定するだけでは失敗の真因にたどり着かず、失敗に学ばない組織になってしまう。

 この連載は組織はなぜ失敗に学ばないのか、状況を打開するために何をすべきかについて、失敗学の成果を基に解説している。前回(2019年1月10日号)は日大アメフト事件を題材に、日本の企業や組織が失敗の原因究明を「犯人捜し」と捉える理由について説明した。

 2回目の今回はプロジェクトの失敗につながる根本的な問題を、IT業界がなぜ解決できていないのかについて取り上げる。まず現状を確認しておく。

プロジェクトの半数は「失敗」

 IT業界は作業をプロジェクト単位に分けて進める場合が多い。新システムの構築や既存システムの刷新が典型だ。「成功だった」と堂々と言える場合もあれば、「失敗だった」と言わざるを得ない結果に終わることもある。

 日経コンピュータが2018年3月1日号で公表したプロジェクト実態調査の結果によれば、1745件に上るシステム導入/刷新プロジェクトのうち「成功」は52.8%、「失敗」は47.2%と成功がわずかに上回った。調査ではスケジュールとコスト、満足度の3条件を満たすプロジェクトを「成功」と定義し、それ以外を「失敗」と見なした。

 調査の対象や方法、評価項目が異なるために単純な比較はできないが、2008年に同誌が実施した調査では成功率が31.1%だった。10年間でプロジェクトの成功率が高まったとの見方もできそうだが、依然として失敗の割合は大きいと言える。

 プロジェクトの成否を評価する際はQ(品質)・C(予算)・D(納期)の3項目に基づき判断する場合が多い。日経コンピュータの2018年の調査はQを満足度とした。予算に関しては、プロジェクトに投じた費用が予算通りまたは下回っていれば「成功」、予算を超えていたら「失敗」と見なした。

 日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)は「企業IT動向調査」でQ・C・Dがどの程度達成できたかを調べている。2004年度から2009年度までの達成率は10%から20%程度で、ほとんど変化がなかった。Q・C・Dを達成した成功プロジェクトはごくわずかしか存在しなかったわけだ。

図 システム構築プロジェクトにおける要素別達成率
6年間でほぼ進歩なし
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 現在も状況が大きく変わったわけではない。「企業IT動向調査2018」を見ると、500人月以上のプロジェクトの48.0%がDすなわち納期を達成できていない。先に触れた日経コンピュータの調査でも、プロジェクトの失敗理由として挙がったのは「要件定義の甘さ」など古典的とも言える内容だった。

 この10年、20年でITを取り巻く環境は激変している。しかもユーザー企業やベンダーは数々のプロジェクトの失敗から学んでいるはずだ。にもかかわらず、これらの調査結果を見る限り、根本的な問題はいまだに解決していないと言わざるを得ない。ある大学院の教授は「IT業界の失敗は100年たっても変わらない」と話す。

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