深刻な人手不足に悩む物流が大きく変わる。小売業や商社、ガスなど様々な業種の企業が自ら、物流のデジタル変革を急ピッチで進めている。AIやロボットなど最新技術を駆使する「物流テック」の最前線に迫った。

量子応用技術で動線最適化、5Gで燃費改善、画像認識の技術で手軽に検品――。IT大手が物流現場を変える新技術の開発を急いでいる。全ての企業は「物流テック」の活用力が問われている。

 「既存のコンピューターでは扱えない難解な問題を解ける」。富士通の武捨悠一AIサービス事業本部第一フロンティア事業部マネージャーは胸を張る。2018年5月に販売を始めた新型コンピューター「デジタルアニーラ」だ。

12月に提供を始める第2世代製品は、解ける問題の複雑さの指標となるビット数を8192ビットと8倍に高めた
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 デジタルアニーラは「量子現象に着想を得た」(武捨マネージャー)という新アーキテクチャーに基づいて開発したコンピューターだ。「量子アニーリング」と呼ぶ量子コンピューターの計算アルゴリズムを、既存のデジタル半導体技術で疑似的に再現した。夢の量子コンピューターの普及に先駆けた「現実的な選択肢」(武捨マネージャー)と言える。この12月には計算できる問題の複雑さの指標を8倍に高めた第二世代品を発売する。

 デジタルアニーラの特徴は「組み合わせ最適化問題」を高速に解くことに特化している点だ。同問題は取り扱うデータ数が増えると計算量が爆発的に増えることで知られる。デジタルアニーラを使うと、既存の汎用コンピューターに比べて同じ問題を1万倍高速に解けるという。

作業員の移動距離を45%削減

 富士通がデジタルアニーラの応用先として狙うのが物流業務だ。倉庫内のピッキング作業に関する担当者の作業ルートや商品の配置、荷物を配送するトラックの走行ルートなど、物流分野には組み合わせ最適化問題として捉えることのできる課題が多い。

 富士通グループのコンピューター製造子会社、富士通ITプロダクツがデジタルアニーラを使って倉庫内のピッキング作業を見直したところ、作業員の移動距離を45%短縮できたという。3000点の部品を取り扱う倉庫に対して、要件定義から見直しに使うプログラムの開発やパラメーターの調整、現場での効果検証までに費やした期間は3カ月。効果を確認できたため、2019年初めにも全面導入する方針だ。配送経路の最適化を含め、物流分野の商機は大きいとみる。

図 富士通の「デジタルアニーラ」の特徴と物流への応用例
量子並みの性能をいち早く実用化
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