深刻な人手不足に悩む物流が大きく変わる。小売業や商社、ガスなど様々な業種の企業が自ら、物流のデジタル変革を急ピッチで進めている。AIやロボットなど最新技術を駆使する「物流テック」の最前線に迫った。

打倒アマゾンに向け、様々な業界の大手が物流強化に動き出した。楽天はAIを活用して最短数十分での「即時配送」を目指す。三井物産は熟練者も唸る配送ルートを立案するAIを日立と開発した。

楽天
――AIで即時配送目指す

 「やりたいことではなく、やらないといけないことだ」。楽天の三木谷浩史会長兼社長は新たな物流戦略「ワンデリバリー構想」の意義をこう語る。

 ワンデリバリー構想は「楽天市場」の出店者向けに、商品の保管から配送まで楽天が一括して請け負うものだ。楽天の物流施設で荷物を預かっておき、楽天市場で注文を受け付けたら、楽天が倉庫で荷物をピッキングして梱包、楽天の配送網で消費者に届ける。

 同構想の狙いは楽天市場の購入者と出店者、双方の満足度を高めることだ。楽天は倉庫の在庫データを自社で押さえられるので、売れ筋商品をより正確に把握できる。中小の出店企業が自力で届けるよりも配送日時や受け取り方法などの柔軟性を高めやすい。

図 楽天が取り組む物流改革の概要
最短数十分での配送を狙う
[画像のクリックで拡大表示]

 楽天が目指すのは配送や倉庫管理など専業大手の上をいくサービスだ。「(ヤマト運輸などの)大手運送会社には難しい特殊なニーズにも応える」(楽天の物流事業を統括する小森紀昭コマースカンパニー執行役員)。

 具体例の1つが2018年6月に始めた「置き配(おきはい)」だ。玄関の前やガスメーターボックスの中など購入者が指定した場所に荷物を置く。購入者は配達時間に合わせて家にいる必要がない。同社が販売する日用品や書籍の配送サービス「Rakuten-EXPRESS」の商品向けに、首都圏と大阪府のそれぞれ一部で提供している。

 将来は即時性をさらに磨き、最短数十分で届ける「即時配送」を視野に入れる。「1年以内にはPoC(概念実証)を始めたい」(小森執行役員)。

 楽天は物流施設やシステムの拡充を急いでいる。物流倉庫の建設・運営の大手、日本GLPが千葉県と大阪府にそれぞれ建設中の施設を間借りし、2019年3月ごろから順次稼働させる。

千葉県流山市に2019年初めに開設予定の物流施設(画像提供:楽天)
[画像のクリックで拡大表示]

リアルタイムルーティングを視野に

 千葉県などに新設する拠点には「最新のマテリアルハンドリング技術を導入して省人化や生産性向上を図る」(小森執行役員)。具体的には台車型ロボットなどで箱詰め作業担当者の元へと荷物を運んでくるGTP(グッズ・トゥ・パーソン)システムや、アーム状ロボットを使ったピッキング作業の自動化システムを検討しているとみられる。

 需要予測や配送ルートの最適化に向けてAI(人工知能)の活用も進める。トラックなどによる配車計画の作成や運行管理を担うTMS(トランスポート・マネジメント・システム)にAI技術を適用し、予測や注文状況に応じて配送ルートを動的に変える「リアルタイムルーティング」(小森執行役員)を目指す。まるでネット上を飛び交うデータのように荷物を柔軟に扱うイメージだ。楽天は打倒アマゾンを狙い、自社の持てる資産を総動員する。

この先は有料会員の登録が必要です。「日経コンピュータ」定期購読者もログインしてお読みいただけます。今なら有料会員(月額プラン)が4月末まで無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら