深刻な人手不足に悩む物流が大きく変わる。小売業や商社、ガスなど様々な業種の企業が自ら、物流のデジタル変革を急ピッチで進めている。AIやロボットなど最新技術を駆使する「物流テック」の最前線に迫った。

業績好調のファーストリテイリングとニトリホールディングス。製造から小売りまで一貫して手掛ける両社には共通点がある。倉庫のハイテク化に注力している点だ。ロボが行き交う現場に迫る。

 東京・江東区の有明地区。湾岸にそびえる巨大な建物に、トラックがひっきりなしに出入りする。ファーストリテイリングが運営する、ユニクロのEC(電子商取引)サイト向け物流倉庫だ。2018年10月に本稼働した。商品の保管だけでなくECの注文に応じたピッキングから梱包、配送まで一連の作業を担う。

店舗に加えてEC事業の強化を急ぐ(写真提供:ファーストリテイリング)
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 倉庫内を動くのは荷物を載せた折り畳みコンテナや荷下ろし用ロボット。人の姿はほとんど見当たらない。

 記者がフロアを歩いていると汗がにじむ。暑い。空調を人間の適温にする必要がないからなのか。

図 ファーストリテイリングが東京・有明の物流倉庫に導入した自動化技術
ほとんどの作業を自動化
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 「自動化技術を全面採用した倉庫を3年で世界中に作りたい」。ファストリの柳井正会長兼社長はこう意気込む。中国にタイ、オーストラリア、米国の東西海岸…。既に世界各地で有明倉庫をお手本にした自動化技術の開発が進んでいる。日本国内でも有明を含むEC向け3拠点、店舗向け9拠点の倉庫に順次導入する方針だ。投資額は1拠点当たり10億~100億円。世界全体で見ると総額1000億円規模になる。

図 ファーストリテイリングの物流改革の変遷と売上高の推移
注:2012年度までは日本基準、2013年度以降はIFRS(国際会計基準)
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1年以内に完全自動化へ

 商品の入庫作業のスピードは80倍、出庫スピードは19倍、人員は9割減、ピッキング作業者の歩数はゼロ――。ファストリが有明倉庫に導入した自動化技術の効果だ。RFID(無線自動識別)タグやセンサーといったIoT(インターネット・オブ・シングズ)技術やロボット技術などを駆使。商品1つひとつをRFIDで区別し、位置や動きを追跡できるようにした。これにより商品の入庫から荷下ろし、検品、保管、出庫指示、箱作り、封かん、仕分け、コンテナの片付けまで、ピッキングを除く作業を自動化した。

 たった1つ人手を費やしているピッキング作業についても、作業者が歩き回るのではなく「モノが勝手に作業者の元へ寄ってくる」(神保拓也上席執行役員)仕組みを実現した。注文データを基に、指定の商品が入ったコンテナをベルトコンベヤーで作業者の手元に送る。作業者は目の前にある画面の指示に従ってコンテナから商品を取り出し、配送用の箱に詰める。有明倉庫を2018年春に試験稼働させて以来「検品漏れは1件もない」(同)という。

 唯一残るこの人手作業すらも「遅くとも1年以内には自動化する」(同)。画像認識技術を備えたアーム状ロボットの活用を想定しているとみられる。

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