日本のAI(人工知能)人材不足が、年を追うごとに深刻さを増している。デジタルの時代を迎えるにあたって、AI人材不足は致命傷になりかねない。企業は短期・中期・長期の観点から対策に取り組む必要がある。

 日本はAIエンジニアの絶対数が足りない--。日本を代表するAIスタートアップの人事担当者はこう口をそろえる。

 ボストン コンサルティング グループの岩渕匡敦マネージング・ディレクター&パートナーは「我々は常々日本企業のデジタル戦略の立案を支援しているが、いつもネックとなるのが(顧客企業の)社内にAI人材がいないことだ」と、2019年10月に同社が主催したイベントで実情を明らかにした。「ほぼ全ての産業がディスラプション(破壊)の危機にある」(同氏)という状況下で、GAFA(米グーグル、米アマゾン・ドット・コム、米フェイスブック、米アップル)などに対抗しようにも必要な人材を日本では採用できない。

 日経コンピュータは2017年12月7日号の特集「勃発、AI人材争奪戦」で、AI人材が国内で約2万7000人不足しているとの試算を示し、供給するAI人材の質・量を高める必要があると訴えた。それから約2年。AI人材を巡る状況は好転どころかさらに悪くなっている。

 米メディアのUSニューズ&ワールド・リポートが2019年10月に公開した直近のコンピューターサイエンス学部ランキングで、日本の大学は最高位の東京大学でさえ134位だった。

 一方、米中を筆頭にシンガポール、サウジアラビア、フランス、カナダ、韓国などの大学が上位に入り、自国企業に即戦力のAI人材を供給している。

 日本政府も手をこまぬいているわけではない。2019年6月に閣議決定したAIに関する政策パッケージ「AI戦略2019」で、データサイエンスやAIを各専門分野に適用できる応用人材を年間25万人育成する計画を掲げた。だが教員の手当や授業の方法論など、2025年の実現を目指すとする計画の具体像はまだ何も見えていない。

3つの施策でAI人材を採用・育成

 AI人材の供給力で、日本は圧倒的な劣位にある。日本企業はこの事実を直視し対策を打たなければならない。新卒一括採用に代表される現在の採用システムに頼っていては、質と量の両面で世界の企業に対抗できるAI人材を充足させることは到底できない。短期・中期・長期それぞれの観点から、これまでにない手でAI人材を採用、育成する必要がある。

図 AI人材採用・育成の戦略
足りないAI人材、3つの施策
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 短期で即効性のある施策は、即戦力の海外人材を採用し日本に呼ぶことだ。メルカリをはじめ、AIを事業に生かすスタートアップ企業は既に多くの外国籍エンジニアを雇い入れている。メルカリの場合、数百人いるとみられるエンジニアのうち実に4割近くが外国籍だ。介護支援や人材管理などのAIサービスを手掛けるエクサウィザーズも、外国籍エンジニアが4分の1を占める。「創業当初から優秀なエンジニアを広く求めた結果、自然と外国籍の比率が高まった」(人事担当者)。

 外国籍のエンジニアにとっても、AI人材不足の日本は就職先として魅力的だ。「東京は米シリコンバレー周辺のようなエンジニア同士の激烈な競争がない分、目の前のサービス開発に集中できる」(ある外国籍エンジニア)。米企業ほどの高い給与を期待できない半面、そこそこの収入で便利に生活できるのは東京の大きな利点だという。

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