米グーグルが量子コンピューターの「量子超越性」を実証したと発表した。世界最高のスーパーコンピューターでも1万年かかる計算を200秒で解いた。量子コンピューターは未完成であり、今回解いた計算にも実用性は無い。それでも途方もない計算パワーを有していることを示したのは事実だ。グーグルは10年以内に量子コンピューターを完成させる計画を描く。米国、欧州、中国、そして日本で加速する量子コンピューター開発と期待される用途に関する最新動向を緊急検証する。

 米グーグルがついに「量子超越性」を実証した。量子コンピューターが既存方式のコンピューターでは到達し得ない能力を持つと確かめたのだ。

 「0」と「1」の情報を重ね合わせた状態で保持できる「量子ビット」を54個搭載する独自開発の量子プロセッサー「Sycamore(シカモア)」が、世界最高のスーパーコンピューター(スパコン)で1万年かかる計算を200秒で解いたと、2019年10月23日に英「Nature」に掲載した論文で発表した。性能は実に約16億倍である。

 「我々が開発した量子コンピューターは、量子力学の原理によって動く全く新しい種類のコンピューターだ。我々はその途方もない計算能力を世界で初めて実験によって示した」。グーグルの量子コンピューター開発の責任者とカリフォルニア大学サンタバーバラ校の教授を兼任するジョン・マルティニス氏は同日、サンタバーバラにある同社の量子コンピューター開発拠点で記者会見を開き、今回の成果の意義をそう解説した。

 グーグルは2014年にマルティニス教授を研究チームごと引き抜き、量子コンピューターの自社開発を進めてきた。それから5年で「コンピューター業界にとっての大きなマイルストーン」(マルティニス教授)をなし遂げた。

 グーグルが実証した量子超越性とはどのようなものか。今回同社はSycamoreを使って「乱数を生成する量子回路」を実装し、実際に乱数(ビット列)を発生させた。並行して既存方式のコンピューターでも同様の構成の量子回路をシミュレーションし、同じように乱数を生成させた。

 量子ビットの数が少ないと、量子コンピューターが生成した乱数の確率分布は、既存のコンピューターによるシミュレーションでも再現が可能だ。だが量子ビットの数が増えていくと、既存のコンピューターでは再現が難しくなる。Sycamoreが乱数を100万回発生させるのにかかった時間は200秒(3分20秒)だったが、これを世界最速のスパコンで米オークリッジ国立研究所が運営する「Summit」でシミュレーションすると1万年もの時間がかかる。グーグルはこの約16億倍の性能という成果をもって、量子コンピューターが現在のコンピューターを「超越」したと見なした。

図 量子コンピューター「Sycamore」
スパコンで1万年かかる計算が200秒に/量子超越性を実証したSycamoreとグーグルの量子コンピューター開発を率いるジョン・マルティニス チーフサイエンティスト(写真左:米グーグル)
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