通信速度は100倍に――。第5世代移動通信システム(5G)の商用化に向けたプレサービスが2019年夏ごろにスタートする。「スマホで動画が見やすくなる程度だろう」と侮ってはいけない。様々な産業が「場所」の制約から解き放たれる、5Gの新世界に迫る。

 通信業界は首位のNTTドコモを2位のKDDIと3位のソフトバンクが追う体制が続く。5Gをシェア逆転の好機と位置付け、後を追う2社は打倒ドコモに執念を燃やす。迎え撃つドコモを含む3社のキーパーソンが5G戦略を明かす。

目指すは社会問題の解決、実環境での検証急ぐ

NTTドコモ 執行役員 5Gイノベーション推進室長 中村 武宏 氏

(写真:陶山 勉)

 当社は私が室長を務める5Gイノベーション推進室を中心に5Gの技術面の検証に取り組んできた。機器の遠隔操作やロボット・医療分野での活用といったデモを通して、「日本の社会問題の解決に5Gが貢献できそうだ」と社内外に訴え、アイデアの発案を促してきた。いよいよ商用化が近づき、全社で事業化を進めるため、2018年4月に「5G事業推進室」を新設し準備を加速している。

 2019年にラグビーのワールドカップが日本で開催される。それに合わせてラグビー場などでプレサービスを実施できれば、当社のサービスの訴求にもつながる。具体案は検討中だが、2018年に平昌オリンピックの会場周辺で韓国KTが実施した試験サービスよりは実用的な内容にする。

 5Gがスムーズに立ち上がるとよいが、時間は迫っているし周波数の割り当てもまだだ。本来なら割り当てられた周波数に合わせて商用化したいところだがそうはいかない。割り当てを待たずに端末の開発やサービスの運用体制、基地局の設置計画などを進めている。協業相手は1700社を超え、新たな取り組みを展開する下地ができた。

 移動通信システムの仕組みは複雑だ。通信の標準仕様はあるが、機器の製造元が違うと基地局と端末が簡単につながらないことも。そうした問題にメーカーと解決に取り組んでいる。

 当社の5Gは技術的に一日の長があると自負している。大規模な研究開発組織があり、早くから検証に取り組んで5Gのノウハウを蓄積してきた。

 ただ今後重要なのは屋内外の実環境で検証を重ねてリアルな性能を出すことだ。年末から5G対応の商用製品が出てくる。どんどん使って機器ごとの性能や課題を把握し、当社の5Gサービスにどう生かすかを検証していく。

 5Gのエリアをつくるのは想像以上に難しい。28ギガHz帯など高い周波数帯で全国をカバーするには相当数の基地局が必要になる。加えて28ギガHz帯は遠くまで飛ばないし建物を回り込まない。スマホを持つ人がビル陰に移動したり、基地局と端末の間に何か物が入ったりすると速度が落ちる。他の周波数帯でいかにスマートにカバーするかという全体設計が大切だ。

 2019年早々にはLTEも毎秒1ギガビットで提供可能になる。LTEを継続しつつ5Gを徐々に展開していき、5Gのエリアに入ったら一段と快適に使えるという体感を提供したい。(談)

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