通信速度は100倍に――。第5世代移動通信システム(5G)の商用化に向けたプレサービスが2019年夏ごろにスタートする。「スマホで動画が見やすくなる程度だろう」と侮ってはいけない。様々な産業が「場所」の制約から解き放たれる、5Gの新世界に迫る。

5Gを使う大きなメリットは4Gよりも高精細で遅延の少ない映像を配信できる点だ。この特徴を生かし、建機や医療機器を遠隔操作しようとする取り組みが広がっている。人手不足や高齢化に直面する日本社会の課題解決につながる可能性を秘める。

 KDDIは2018年2月に大林組やNECと共同で建機を遠隔操作する実証実験に取り組んだ。パワーショベルの正面に4Kカメラを2台並べ、さらに建機の上部に2Kの360度カメラを、工事現場のやぐらには俯瞰用の2Kカメラ2台を設置。これらの映像を5G回線経由で遠隔室に送った。遠隔室では操作者が裸眼で3D画像を把握できるディスプレーを確認しながら工事を進めた。

図 KDDIの遠隔操作とNTTドコモの遠隔医療の実証実験
より安全に、より健康に  KDDIと大林組による、5Gを使った建機の遠隔操作の実証実験。高精細の3D映像を見ながら、低遅延で建機を操作した(写真提供:KDDI)
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 大林組は特定小電力無線で建機を遠隔操作する技術を実用化しているが、映像の伝送には無線LANを使っていた。「無線LANは通信速度や電波の干渉などに問題があり、1カ所の現場で操作可能な建機の数も限られていた」。KDDIの松永彰モバイル技術本部シニアディレクターは既存技術の限界をこう指摘する。

 実証実験では映像の伝送回線について、無線LANと5Gの2種類用意した。5Gの優位性を明らかにする狙いだ。この実験では4Gを試していない。高解像度のストリーミング映像5本のビットレートを合計すると毎秒300メガビット程度。これを端末側から基地局側に伝送する場合、4Gでは通信速度が不足してしまうためだ。

 パワーショベルを遠隔操作して、指示通りにブロックを積み上げる作業の所要時間は、無線LAN伝送の映像を基に遠隔操作した場合は276秒かかった。5G伝送の映像を基にした場合は177秒と約100秒短縮できた。

 操作者が直接建機に乗り込んで作業した場合の所要時間は50秒であり、それには及ばないものの大幅な改善だ。5G映像の鮮明さや遅延の少なさが業務の効率化に生かせると実証できたといえる。長時間労働が問題になっている建設現場を改善する可能性がある。

 大林組の遠隔操作技術は「熊本城の崩れた石垣の修復など、安全上、人が乗り込んで操作できない現場でも活用されている」(KDDIの松永シニアディレクター)。迅速な復旧を目指すと同時に、作業員が2次災害に巻き込まれるのを予防することが求められる災害復旧の現場。万一の緊急時には5Gが復旧に向けた強い味方となりそうだ。

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