通信速度は100倍に――。第5世代移動通信システム(5G)の商用化に向けたプレサービスが2019年夏ごろにスタートする。「スマホで動画が見やすくなる程度だろう」と侮ってはいけない。様々な産業が「場所」の制約から解き放たれる、5Gの新世界に迫る。

かつて「夢の電話」として人々を熱狂させた移動体通信。誕生から約50年、移動体通信は5Gでさらに進化する。速度は5Gで「ギガ」の域に達し、産業構造を一変させる力を持った。

 「すごいよこれ、本当に受話器だけだ」「もしもし母さん、今、万博会場から掛けてるの」――。1970年、日本万国博覧会(大阪万博)で日本電信電話公社(現NTT)が目玉として展示したのは、電話線のない無線式の電話機、その名も「ワイヤレステレホン」だった。約100台がパビリオン「電気通信館」の一室にずらりと並び、会場内の相互通話だけでなく全国の加入回線にも無料で通話できた。

 重さは700グラムと米アップルの最新機「iPhone XS」の約4倍だ。もちろんメールもカメラもアプリも使えず、画面すらない単なる電話機だが、制限時間の30分が過ぎて係員に制止されるまで話し込む人が続出した。183日間の会期中に約65万人が詰めかけ、「夢の電話」が夢でなくなる未来に思いをはせた。

10年サイクルで進化が続く

 それから間もなく50年。移動体通信は2019年から2020年にかけて、大きな進化を遂げる。第5世代移動通信システム(5G)の商用サービスが国内で始まるのだ。

図 移動体通信技術・サービスの主な軌跡
通信技術は約10年周期で進化を遂げてきた(写真提供:NTTドコモ、写真:Getty Images) NTTグループのサービス名を示した。PDC:Personal Digital Cellular W-CDMA:Wideband Code Division Multiple Acces LTE:Long Term Evolution
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 移動体通信はおよそ10年のサイクルで発展してきた。大阪万博から約10年後に登場した自動車電話は月3万円の基本料にレンタル保証料20万円と高価。自動車のトランク脇に立つアンテナが羨望の的だった。小型化を進めたショルダーホンは1985年の日航ジャンボ機墜落事故を御巣鷹の現場からいち早く伝えた。

 バブルが弾けた1990年代は小型化と通信料の下落が加速し、デジタル通信の「2G」を使った「ケータイ」が広く消費者に行き渡った。1999年にはiモードが登場、携帯電話の用途を「話す」から「使う」へと一変させた。2000年代は「3G」が動画時代の幕開けを告げ、2010年代は「4G」がスマートフォン全盛の通信インフラを支えてきた――。

 次の5Gで移動体通信の実効速度はついに毎秒「ギガ」ビットの大台に乗る。2時間の映画全編のデータを3秒で送れる速度だけに、「動画はストリーミングでなく、例えば走行中の電車が基地局に近づいた瞬間にまとめてダウンロードするような使い方が可能になる」(NTTドコモの奥村幸彦5Gイノベーション推進室担当部長)。

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