スマホ決済サービスに企業が相次ぎ乗り出している。銀行から通信、ベンチャーまで顔触れは多様だ。政府のキャッシュレス決済倍増計画も後押しする。

 ソフトバンクとヤフー、LINEだけではない。スマホ決済サービスに乗り出す事業者が相次いでいる。NTTドコモは2018年4月にQRコードを使った「d払い」を開始。みずほ銀行は同年3月にNFC(近距離無線通信)を活用した「みずほWallet」を始めた。スマホ決済に参入した企業はここ1年で10社近くに上る。

表 主なスマートフォン決済事業者
2017年以降に10社以上が参入
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 決済サービスのコンサルティングなどを手掛けるインフキュリオン・グループの代表取締役でFintech協会の代表理事会長を務める丸山弘毅氏は「これから動き出すビッグプレーヤーもいる。カード業界も動く」と見通す。

現金取り扱いコストはGDPの3%

 政府がキャッシュレス推進の方針を打ち出しているのも追い風だ。経済産業省が2018年4月に策定した「キャッシュレス・ビジョン」によると、日本のキャッシュレス決済比率は18.4%。韓国の89.1%や中国の60.0%、さらに米国の45.0%、インドの38.4%に比べ、後れが目立つ。

 2017年6月に公表した「未来投資戦略 2017」で、政府は今後10年間にキャッシュレス決済比率を4割に高めるKPI(重要業績指標)を設定した。キャッシュレス・ビジョンは、この政府目標を2年前倒す方針を掲げる。

 政府はキャッシュレスを進める理由の1つに社会コストの削減を挙げる。日本銀行政策委員会審議委員も務めた、野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「米国の試算では、現金取り扱いのコストはGDP(国内総生産)の1.2%。日本はGDPの3%、年間15兆円を超える計算だ」と説明する。コストには紙幣の発行や流通にかかる費用、民間銀行の現金輸送費や警備費、小売店などのレジ締め作業にかかる人件費などが含まれる。

 これまでキャッシュレス決済の主役を担ってきたクレジットカードや電子マネーは歴史が長く、利用者も慣れている。一方で小規模店舗での採用が進んでいない実情がある。決済に必要な読み取り機器の導入費用や加盟店手数料がかさむからだ。

 PayPayやLINE Payが手数料ゼロというパンドラの箱を空けてまで巨額投資を進めるのは、広大なフロンティアを見込んでいるためだ。PayPayの畑中取締役は「数年間は大赤字かもしれない」と認めつつ、「PayPayが普及すれば、ヤフーの広告収入やソフトバンクのユーザー増といった大きな回収が見込める」と続ける。データがあらゆる産業の競争力に直結するAI(人工知能)の時代に向け、消費者の決済データを握りたいとの思惑もある。

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