世界で700兆円とも言われる「食」の産業がITで変わる。ハングリーに攻める新興勢と、受けて立つ既存勢力。食の市場をITで変革する「フードテック」の最前線を追う。

 時間がかかる、料理が苦手、失敗したくない――。キッチンの課題解決を商機とみて企業が動き出した。IoTやクラウドなどの最新ITを活用し、新たなニーズを掘り起こす。調味料を自動的に調合。自宅で味噌を作る。2つの“フードテック家電”の誕生秘話を紹介しよう。

 醤油大さじ1杯、酒大さじ2杯、酢小さじ2杯――。レシピを見ながら料理をしたことがある人なら誰もが体験したことのある作業だろう。調味料の計測という単純な作業は本当に人間がやる必要があるのだろうか。素朴な問題意識から生まれたのが調味料を自動的に調合する機器「OiCy Taste(オイシーテイスト)」だ。醤油やみりん、酒といった調味料のボトルを内蔵。クックパッドのレシピに沿ってこれらを調合し、レシピ通りの調味料を自動的に作る。クックパッドが、レシピを家電に提供するサービス「OiCy」のコンセプトモデルとして開発した。

図 クックパッドが開発したレシピ連動型調味料サーバーとその仕組み
(写真提供:クックパッド)
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利用者の調理を「眺めているだけ」

 オイシーテイストは食パンのトースターを一回り大きくしたような大きさだ。利用者がスマートフォンから指定したレシピ情報を基に、調味料データをクックパッドのレシピデータからインターネットを通じて得る。

 クックパッドはオイシーテイストをコンセプトモデルと位置付け、自ら製造・販売はしない。クックパッドの研究開発部スマートキッチングループの金子晃久グループ長は「クックパッドのレシピの可能性をまず世の中に発信するのが大事だと思っている」と話す。

 2018年8月にはOiCyのパートナー企業として10社を発表。シャープや日立アプライアンス、クリナップ、LIXILといった企業が並ぶ。「ハードウエアはいったん開発して終わりではない。量産体制の構築や品質管理、販売、サポートなど様々なリソースが必要。クックパッドが新たにハードの開発や製造に乗り出したとして、そのリソースが商品価格に跳ね返るとしたら利用者にとっては不利益でしかない」(金子氏)。

 OiCyの提供に踏み切ったのは同社が長年抱えていた問題意識があった。「クックパッドは利用者に多種多様なレシピを提供できている。一方、その先を助けてあげられていない。アプリの向こう側から料理をするのを眺めていただけだった」(金子氏)。レシピは簡単に見つけられるようになったのに、そこから先は何も変わっていない。「利用者の調理に、もっと物理的に関わっていくことはできないのかと考えた」(金子氏)。

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