世界で700兆円とも言われる「食」の産業がITで変わる。ハングリーに攻める新興勢と、受けて立つ既存勢力。食の市場をITで変革する「フードテック」の最前線を追う。

流通大手のイオンが動き出す。3年で5000億円のデジタル投資を決め、課題の生鮮ECの抜本改革に着手した。新鮮な食材を消費者が欲しいときに食卓へ届ける体制を築き、生鮮ECを強化する米アマゾンに反撃ののろしを上げる。子会社役員から本社執行役に新ポストで抜擢されたデジタル事業担当の齊藤岳彦執行役が、戦略を明かした。

(聞き手は染原 睦美=日経コンピュータ


生鮮食品のECでは目立った成果を上げられていません。

 当社グループは事業会社のイオンリテールを中心にネットスーパーを運営していますが、今提供しているサービス自体が優れたものであるとは思っていません。実店舗のサービスの一環という枠組みから抜け出せておらず、実店舗の補完という位置付けにとどまっています。サイトが使いづらい、欲しい商品がない、届けてほしい時間に受け取れない。お客様の不満の声は大きく、このままだと長く続かない。サービスの質や利便性を高めることが必須だと感じています。

イオンのデジタル事業担当齊藤岳彦執行役。イオンダイレクト社長、イオンリテール取締役、イオントッドコム社長(現任)を経て、現職
(写真:都築 雅人)
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具体策は。

 ネットスーパーの刷新が最優先事項です。まずはユーザーインタフェース(UI)やデザインを一新し、スマートフォンからの操作性を向上させます。今のUIでは1回の買い物に30分程度かかりますが、これを半分以下にします。10月から段階的に新しくし、11月にはイオンリテールが運営するネットスーパーを全面刷新する計画です。

物流の仕組みも変えるのでしょうか。

 今は店舗から発送する方法を採っていますが、倉庫から送る仕組みも取り入れる予定です。店頭の商品を運ぶとどうしても店の品ぞろえに左右されます。倉庫型にすることで品ぞろえに関するお客様の不満を減らせるはずです。

倉庫は住宅地への配送距離が長くなり、逆に配送時間に影響がでませんか。

 配送サービスも同時に拡充します。1つの配送時間帯における配送量を増やします。配達員ももちろん増員しますが、受け取りの方法を広げていくことで配送の絶対量を増やせると考えています。顧客が自宅で受け取る方式は夜間など限られた時間帯に配送が集中しがちです。

 一方、我々の店頭で受け取ってもらえば配達員を増やさなくても顧客に商品を届ける量を増やせるかもしれない。店頭だけではなく、保育園や事業所のような場所も考えられると思います。常に人がいるところに運んでおいて、ラストワンマイルはお客様に取りに来ていただく。それによって、お互いの自由度が担保できます。

ECでの購買体験を向上させる必要に迫られるイオン
(写真提供:イオン)
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