世界で700兆円とも言われる「食」の産業がITで変わる。ハングリーに攻める新興勢と、受けて立つ既存勢力。食の市場をITで変革する「フードテック」の最前線を追う。

人手不足、品切れや廃棄ロス、待ち時間――。外食が直面する数々の難題を、ITで料理する挑戦が始まった。すかいらーく、吉野家、トリドールHDの取り組みを追う。

 注文を取りにテーブルに来た従業員が注文端末の蓋を開ける――。ファミリーレストランで見慣れた風景がなくなりつつある。外食大手すかいらーくは2018年10月から店舗の基幹システムを順次刷新する。注文システムを変更し、注文端末はスマホにする。汎用端末を採用することで、操作性を向上する。顧客が持ち込んだクーポンをその場でスマホを使って撮影することもできる。単純に機種を入れ替えるだけではない。注文を受け取るキッチンにディスプレーを導入して注文をデータとして管理する。

ガストのキッチンと新旧オーダー端末
(写真:的野 弘路)
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すかいらーくは自動発注に磨き

 商品や注文のマスターデータを整理したことで、商品の自動発注機能を大幅に強化できた。具体的にはドリンクバーの飲料など業者が店舗に直接納品する「店直品」や、一般食品と呼ばれる調味料、フライ油などの常温管理食品、日替わりランチをはじめとする「確定発注品」を自動発注できるようにする。既存システムで自動発注しているのは「工場毎日品」と呼ばれ、自社工場で製造、管理する冷凍、冷蔵の食材のみだ。自動発注を拡大して、品切れによる機会損失と廃棄ロスを防ぐ。

新システムで自動発注が可能になる主な商品
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 新システムは出前として注文される商品の消費量も織り込んで、基準となる発注量を計算できる。すかいらーくはガストなどの一部店舗で宅配サービスを提供しているが、既存システムは店内での消費量しか加味しなかった。実際には雨が降って来店客が減っても、出前が増えて消費量が上がることさえある。新システムでマネジャーが週1~2回実施していた商品の棚卸し作業が、2週に1回で済むようになる。

 すかいらーくの金谷実取締役常務執行役員は「労務管理、在庫管理、発注、注文・決済のシステムを一気通貫で刷新することで圧倒的な効率化とサービス向上が見込める」と話す。

吉野家はシフト調整にAI

 人手不足のなか、店長の悩みの種である店員のシフト(勤務体制)調整にメスを入れるのが吉野家だ。警備大手のセコムおよび人材管理システムを手がけるエクサウィザーズとAI(人工知能)を使ったシフト調整システムを共同開発。2018年10月に一部店舗で試験的に導入した。

 時間帯別の勤務人数や従業員側の勤務条件などをあらかじめ設定。なるべく多くの条件を満たす推奨シフトをはじき出す。シフトが埋まらない際、誰にどのような言葉で応援勤務を依頼するかについても、ディープラーニング(深層学習)を使って店長に推奨する。

シフト調整の際にAIに読み込ませる項目
(画像提供:セコム)
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 吉野家は「未曾有の人手不足」(河村泰貴社長)を目の前に、AIやロボットに積極的に投資する。シフト調整ソフトは、今後外販を始める予定で「飲食業のみならず、大きく世の中を変えうるサービスだ」(河村社長)と自信をのぞかせる。

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