選挙は投票所に出向き、紙の用紙に候補者の名前を書いて投票するもの――。近い将来、こんな常識が変わるかもしれない。スマートフォンなどを使って、いつどこからでも投票できる「インターネット選挙」が現実になろうとしている。政府は公職選挙の在外投票から導入を狙う。国内での実証実験も始まった。電子投票の失敗を乗り越え、現実解が見えたインターネット選挙の衝撃に迫る。

 インターネット投票のメリットをいち早く得た自治体がある。茨城県つくば市だ。2018年8月に実施した実証実験に119人が参加した。手軽さなどの利点とともに操作性など課題も見えてきた。

 「宇宙からでも投票できるようにしたい」。2018年8月、インターネット投票システムを利用した茨城県つくば市の五十嵐立青市長は笑顔で語った。

投票する五十嵐立青つくば市長
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 つくば市はIT活用政策コンテスト「つくばSociety 5.0社会実装トライアル支援事業」における企画提案の最終審査で、ネット投票システムを導入した。本人確認やセキュリティの確保のためにマイナンバーカードとブロックチェーン技術を併用している。両者を活用したシステムは国内初という。

図 VOTE FORがつくば市で実証に使ったネット投票システムの概要
マイナンバーカードとブロックチェーンを組み合わせた
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「1人1票」と「投票の秘密」を両立

 五十嵐市長が体験したネット投票は以下のような流れだ。つくば市役所に出向き、タブレットPCにつながったカードリーダーに自分のマイナンバーカードを認識させる。そしてカード申請時に登録した暗証番号を入力する。本人認証が終わると、画面に投票先の候補が表示される。投票したい候補のボタンに触れて投票を終えた。作業にかかる時間は数十秒程度だ。

 ネット投票が普及すれば、つくば市の宇宙航空研究開発機構(JAXA)事業所に勤める関係者は宇宙からでも選挙に参加できる。冒頭に紹介した五十嵐市長の発言は決して冗談ではない。

 つくば市が導入したネット投票システムの開発を主導したのはVOTEFORだ。データ管理システムなどを手掛けるパイプドHDのグループ会社で、政治・選挙情報サイト「政治山」を運営する。システムの企画や仕様設計をVOTE FORが担い、構築を同グループ会社のパイプドビッツが担当した。

 VOTE FORは今回のシステム導入を、公職選挙でネット投票を活用する際の課題を検証するための実証実験と位置づける。公職選挙の投票では「1人1票」、つまり投票権を持つ本人が確かに1票を投じたと把握する仕組みが欠かせない。同時に「投票の秘密」、すなわち投票先が他人に知られない手立ても必要だ。

 1人1票と投票の秘密の両立は容易でない。しかしVOTE FORの市ノ澤充社長はマイナンバーカードとブロックチェーンの併用で「両立できると検証することができた」と自信を見せる。

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