今から3年半後にはほとんどの住民にマイナンバーカードを持たせる─。開始3年半で保有率が1割台と低迷するなか、政府は初めて「想定」を掲げた。「大号令」に自治体は耐えられるのか。窓口の混乱リスクが高まる。

(写真:123RF)

 政府の「デジタル・ガバメント閣僚会議」が公表したマイナンバーカードの普及促進策が、カードの交付実務を担う自治体の窓口に混乱をもたらしそうだ。

 カードの普及率は2016年1月の交付開始から3年半たった2019年7月時点で13.5%にとどまる。そこから3年8カ月後の2023年3月末に「ほとんどの住民がカードを保有」するとの想定を政府が打ち出したからだ。

 マイナンバーカードは自治体が窓口となって希望者に無償で交付している。ある自治体関係者がこれまでの実績を基に窓口で交付する枚数を試算したところ、「全国のほとんどの自治体は毎月の交付枚数を今の10倍以上に引き上げなければ政府の想定を達成できない」と指摘する。

交付枚数の「想定」を初公表

 菅義偉官房長官が議長を務めるデジタル・ガバメント閣僚会議は2019年9月に、マイナンバーカードの想定交付枚数を公表した。政府が具体的な想定交付枚数を公表するのは初めて。グラフにすると、政府が公表した普及ペースは急な角度で右肩上がりに伸びていると分かる。

 マイナンバーカード事業を主管する総務省は自治体関係者を集めた会合で、全国の自治体に対して、交付枚数を増やすための「体制」を整備する「円滑化計画」を策定するように求めている。自治体職員が土日に窓口を開いたり企業などに出向いて申請を受け付けたりする体制の整備を、総務省は補助金を交付して後押しする計画だ。

 しかし自治体関係者は体制作りに不安を隠さない。そもそもカード交付にはセキュリティーを確保した窓口で正規職員が対応する体制が不可欠だ。

 交付には厳格な本人確認や、カード内蔵ICチップに搭載した「公的個人認証サービス(JPKI)」のパスワードなどを設定する作業が必須だからだ。だが、多くの自治体は人手不足に悩んでおり、その体制を作るのは難しい。

 加えて、さらなる人手不足を招きかねない国の施策が始まる。政府はマイナンバーカードの普及とともに消費税増税による消費落ち込みを防ぐ目的で、2020年夏から国費でポイントを上乗せする「マイナポイント」を導入する。同ポイントは民間のキャッシュレス決済サービスで買い物に使える。

 その代わりに、ポイントを利用するにはマイナンバーやJPKIとは別に「マイキーID」と呼ぶ新たなIDをカードに設定する必要がある。マイナポイントを獲得する目的でカード申請が殺到すれば、マイキーIDの設定作業に伴うトラブルが急増して自治体が対応に追われ、カード交付が滞る恐れがある。

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