通信料金がLTEより桁違いに安く、省電力が売りの通信規格「LPWA(ローパワー・ワイドエリア)」が日本全国で使われ始めた。LPWAを貪欲に使いこなす先進事例を紹介しよう。

 LPWAに着目するのは民間企業だけではない。自治体が行政サービスの拡充を狙い、街ごとLPWAのエリアを構築する例もある。

 福岡県糸島市はIoTベンチャーであるBraveridgeと共同で市役所など20カ所にLoRaWANの親機を設置し、住民サービスを提供している。コミュニティバスの接近案内はその1つだ。停留所とバスの両方にLoRaWANとBluetooth内蔵の子機を設置し、バスが停留所に接近するたびにBluetoothで検知、LoRaWANを介してサーバーに位置を伝える。乗客が停留所に設置された案内機のボタンを押すとサーバー側からLoRaWANで情報を取得。バスが「もうすぐ来ます」といった目安となる情報を得られる。

LoRaWANでコミュニティバスの位置を見える化
福岡県糸島市内のコミュニティバス停留所に設置した、バスの位置確認ボタン
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 福岡市も同様に市内のほぼ全域をカバーする「Fukuoka City LoRaWAN」を運用している。市内のきりん保育園はこれを活用し、保育室内の温度や湿度、二酸化炭素などの濃度を測定するLoRaWAN対応の環境センサーをNTT西日本と共同で導入している。園児の寝返り検知センサーなども活用予定だ。友枝光史郎副施設長は「LPWAセンサーにより保育士の負担を減らし、子供と接する時間を増やせる」と期待を寄せる。

LoRaWANで「IoT保育園」を実現
「Fukuoka City LoRaWAN」を使った保育室の環境表示システム。福岡市のきりん保育園が導入した
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水位を測定し住民や環境を守る

 北海道胆振東部地震や西日本豪雨、台風21号など様々な震災に見舞われた2018年の日本列島。自然の脅威に対し、LPWAを内蔵するセンサーで早期に異変を察知して住民の身の安全を確保しようとする動きが相次ぐ。

 福岡県糸島市とBraveridgeは市内を流れる小規模な河川や農業用の用水路、ため池などにLoRaWAN内蔵の水位センサーを取り付け、監視している。

 Braveridgeの水位センサーは機能を絞って価格を1台あたり2万円程度に抑えた。下部の左右2カ所に電極が露出しており、普段は通信しない。設置した高さまで水位が上昇してくると電極がショートし、その情報をLoRaWAN経由でサーバーに伝達する。所定の警戒水位に達したかどうかしか分からないものの、従来の水位計より9割以上も安い。「常にきめ細かな水位の変化の取得が必要とは限らない。水門を開けるべきか否かを判断するために一定の水位を超えたかが分かれば十分なので安くしてほしいという需要もあるはずだ」(Braveridge 開発営業部の田中智氏)。

 福岡市もベンチャー企業のイートラストが開発したLoRaWAN内蔵の水位センサーを市内の河川で運用している。橋に設置したセンサーから76ギガヘルツ帯の電波を水面に向けて発射し、その反射から水位を計測。LoRaWAN経由でサーバー側に送る仕組みだ。昼間は太陽光発電、夜間は電池で動かす。日照がない日が続いても10分ごとの測定で7日間駆動する。「1級河川で使われる水位計は1カ所あたり2000万円前後と高価だが、当社の水位計ならば100万円程度。常時測定も可能だ」とイートラストの酒井龍市社長は胸を張る。実に20分の1の安さだ。

LPWAでゲリラ豪雨から住民を守る
福岡県糸島市(上)と福岡市がそれぞれ導入した、LoRaWAN内蔵の水位計
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