全26部門の順位が乱高下したのはユーザー企業の不満の表れだ。自由意見には「提案力」「サポート」「ソフト更新」関連の声が集まった。ベンダーはデジタルを語る前に、基本動作から緊急点検が必要だ。

 スキルや提案力の不足、海外ベンダーを中心とした露骨なサポート軽視、ソフトウエアの更新に手間や費用がかかる――。調査で募った記入形式の自由意見を分析した結果、これら3種類の不満が浮かび上がった。いずれも以前から出ていた内容ではあるものの、デジタル化を進めるユーザー企業にとって切迫感はこれまで以上に高まっている。

図 自由意見で分かったユーザーが抱える不満、背景にあるベンダーの事情
3つの不満が浮き彫りに
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新技術の提案力が不足

 特に多かったのがIT関連のスキルや提案力の不足に関する不満だ。「先端技術に関してベンダーの提案力が昔と比べて弱くなってきている」(製造業の回答者)といった声だ。AI(人工知能)やクラウドなど新技術に関して問題視する意見が目立った。「クラウド上には様々なサービスがある。それを熟知してコンサルティングやシステムインテグレーションできるITベンダーが少ない」(同)といった不満をユーザーは抱えていると言える。

 ベンダーの提案力が低下しているとユーザーが感じる背景には、ユーザー企業が求めるニーズの多様化がある。あるITベンダーの人材育成担当役員によると、今から7~8年前まではITエンジニア1人が1~2種類の技術を習得していれば開発現場で通用していたという。

 しかしデジタル化の波で状況は一変。「社内で運用しているシステムにハイブリッドクラウドを適用したい」といった要望がユーザー企業から出てくるようになった。「ニーズに応えるには顧客の社内システムに関するスキルに加えて、クラウドやネットワーク、セキュリティといった多様なスキルを併せ持つITエンジニアが必要になる。これらの技術を的確に組み合わせて提案するスキルが求められる」と話す。

 同役員は「ITエンジニア1人が少なくとも4~5種類の技術に習熟していないと対応できない」という。「ITエンジニアの仕事を効率化する一方で、様々なスキルを習得できる環境や体制を作ることがITベンダーにとって急務だ」と警鐘を鳴らす。

 新技術に関する提案力の低下は深刻だ。製造業の回答者は「ITベンダーの担当者が自ら考えて提案する場面が少なくなった」と指摘する。この回答者はAI関連サービスを手掛けるITベンダーに、AIを自社の業務に適用する際のアイデアを求めたという。回答者の企業が社内に蓄積している各種データを示したうえで「ただの思いつきでよい」から提案してほしいと依頼した。

 だがITベンダーの担当者は「何をしたいのですか」と紋切り型のヒアリングに終始したという。結局、提案は出てこなかった。回答者は「AIの業務適用は研究と同じく試行錯誤しながら進めていく。そのきっかけが欲しかっただけなのに」と振り返る。

 こうしたユーザーの動きに対して大手ITベンダーも手をこまぬいているわけではない。日立製作所のシステム&サービスビジネス統括責任者である塩塚啓一副社長は「デザイン思考を用いた顧客とのワークショップやシミュレーションツールを活用している」と話す。上流設計の段階から顧客と意識を合わせて要望を引き出し、「刺さる」提案を狙っている。

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