配車アプリから半導体、自動運転、金融、医療、衛星通信、農業、鉱山開発まで――。孫正義氏が率いるソフトバンクグループと10兆円規模の「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」の投資先は一見するとバラバラであり統一感が全くない。出資先への取材を基に孫氏の目利き力を検証する。

 「こんなばかな国がいまだにあることが信じられない」。日本のライドシェア規制を痛烈に批判するソフトバンク孫正義氏。中国 滴滴出行に95億ドル、米ウーバーに77億ドルを出資するなどライドシェアリング事業に力を注ぐ理由を見てみよう。

ソフトバンク・ビジョン・ファンドなどが出資する海外3社
企業名業種出資額
中国 滴滴出行ライドシェア95億ドル
米ウーバーライドシェア77億ドル
米ウィーワーク共用オフィス44億ドル

米ウーバー、中国 滴滴など4社

AIで精度85%の需要予測、安全運転支援も

 「17年度の運賃は世界合計で7兆円規模、1日当たりの乗車回数は3500万回。いまは4000万を超えているだろう。我々は業界全体の筆頭株主だ」。孫氏は自らが率いるライドシェア連合を誇らしげに語る。

 連合の一角を成すのが推定企業評価額560億ドルの中国の滴滴出行(ディディチューシン)だ。「競争が厳しい中国市場で育てたAIは、多くの都市で通用する」。滴滴の柳青総裁はこう語った。ソフトバンクグループが都内で7月に開いたイベントでの発言だ。

 米ウーバーテクノロジーズの中国事業を買収し、ライドシェア事業で中国市場をほぼ制した滴滴が次に目指すのは、世界の主要都市への進出だ。滴滴の強さの源泉は、ユーザーが生み出す1日当たり1.2億マイル(1.9億キロメートル)、100テラバイト分のビッグデータが鍛えるAIシステムにある。

 滴滴が開発するAIの象徴といえるのが、ライドシェアの需要を予測するシステムだ。ある時刻のどの地域からどの地域に移動するニーズが高まるか、機械学習に基づき推測する。各地域について、15分後の需要を85%の精度で予測できるという。

 安全性の向上にもAIを使う。ドライバーの同意を得て運転行動をモニタリングし、運転時間やブレーキ操作などと交通事故の関係を分析。安全運転をするドライバーにボーナスを出す仕組みを導入した。渋滞予測に基づいて信号を操作するAIも開発し、一部の都市で渋滞を2~3割改善した。

図 中国ライドシェア大手滴滴出行の事業規模を示す数値
日々ビッグデータを生み出す
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滴滴出行の柳青総裁は「AIで安全な配車サービスを実現する」と語る
(写真:陶山勉)
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世界規模の配車連合を形成

 滴滴はソフトバンクグループと共同出資会社「DiDiモビリティジャパン」を日本に設立。2018年秋に配車サービスの試験提供を始める計画だ。

 「世界各地からの訪日客に向けたサービス提供の基盤になり得る」。同サービスに参加するタクシー事業者の1社、第一交通産業の田中亮一郎社長はこんな見立てを披露する。孫氏は「タクシー会社と競合するのでなく、協調し、進化する」と語り、他のタクシー会社にも参加を呼びかけた。

 ソフトバンクグループが出資するライドシェア企業はほかにもある。ウーバーを筆頭にシンガポールのグラブ、インドのオラなどに投資している。

 狙いは世界のライドシェア企業と日本のタクシー会社を仲介し、各アプリの配車機能で日本のタクシーを呼べるようにすることだ。最終的には世界各地でライドシェアと現地タクシーとの仲介役を果たす考えとみられる。

図 日本における海外ライドシェア企業とソフトバンクグループの関係
訪日観光客の配車を仲介
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