品質、コスト、ニーズの3点でユーザーは不満を強めている。事業構造や収益モデルを転換したベンダーだけが競争を勝ち抜ける。ユーザーの「怒り」を解き明かし、製品・サービス改革の方策を探る。

 「ベンダーは若手を育てているのか」「SEやコンサルタントの質が年々下がっていると感じる」。

 調査で募った記入式の自由意見には、ベンダーの人材に対する質の低下を懸念する声が噴出した。背景としてユーザー企業が指摘するのが深刻化するIT業界の人手不足だ。

 回答を寄せたある流通業のIT担当者は「人手不足からか、SEへの教育に割く時間が削られているようだ。スキルが極端に低いSEが増えている」と断じる。

スキル不足のSEが問題を拡大

 この会社の開発・運用現場は最近トラブルが増えているという。ベンダーのSEが確認も取らず独断で作業をしてしまう、視野が狭く目先の作業しかできないなど、業務に就くレベルにすら達していないと思われるSEが増え、問題を引き起こしているという。

 人手不足の中で、ベンダーは十分な教育を受けていないSEを現場に送る。SEが現場でトラブル対応に追われることで教育の時間がさらに削られ、人材不足にも拍車がかかる──。こんな悪循環が起こっているのではないか。このIT担当者はこのベンダーを巡る状況を危惧する。

 SEの質の低下を指摘する声はほかにも上がった。「開発チームによる成果物の品質が悪くプロジェクトが迷走した。最後はプロジェクトマネジャーらにフォローしてもらったが、開発に参加したSEのレベルはひどいものだった」(製造業)。「全体の印象としてベンダーに人材が育っていない。スキルの低下が著しい」(製造業)といった具合だ。

 人手不足を背景に、ベンダーにおける若手の育成を心配するユーザー企業も多い。「当社の担当者が高齢化している。次の世代の人材が育っているのかどうか不安だ」(流通/小売業)。「担当者が変わると、引き継ぎの際にスキルがうまく継承されていない」(金融業)といった声が上がった。

アジャイル対応に遅れ

 新しい技術に対応できていないベンダーへの不満も目に付いた。最たる例が新しい開発手法への対応を求めるユーザーの声だ。

 以前からの開発手法であるウォーターフォール型に限界を感じ、新プロジェクトなどでアジャイル開発に取り組みたいユーザー企業は増えている。しかし、「依然としてウォーターフォール型での開発と検収でしか対応してくれない。求めても別の開発手法の提案が出てこない」(商社)という意見が少なくない。

 変わらないベンダーにユーザーが見切りをつける動きも出てきた。ある通信サービス業の回答者は「今後、ベンダーにはアジャイル開発にも柔軟に対応できる契約形態とビジネスモデルを求めていく。対応できないベンダーは見直していく」と断言する。

 受託開発でアジャイル開発に対応するとなれば、開発者に求められるスキルは大きく変わる。しかしベンダー側でアジャイル開発ができる人材を豊富に供給するだけの教育体制や人材育成の環境作りが追いついていないのが現状だ。

 アジャイル開発に限らない。マイクロサービスやクラウド、コンテナ、データ分析、AI(人工知能)、IoT(インターネット・オブ・シングズ)など、システム構築に要求される技術は広がっている。

 NECで運用サービスを統括する嶋村寿サービス&プラットフォームSI事業部長代理は「現場では特定の技術に特化した専門家より、様々な技術を幅広く使えるマルチスキル型の人材が求められている」と指摘する。

図 提案力強化に向けたベンダーの取り組み
マルチスキルと組織力で人手不足を乗り切る
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「時代遅れ」にユーザーが危機感

 ユーザー企業がIT業界の人手不足を危惧しているにもかかわらず、ベンダーによる問題解決の動きは鈍い。人手不足という課題は各社とも認識しているものの、昔からのビジネスモデルにとらわれ、ユーザーとの新たな関係構築に動けないベンダーが多い。これがベンダーとの関係を見直したいユーザーに不満と怒りをもたらしている。その根底には、ベンダーが抱える3つの「時代遅れ」がある。

図 調査の自由意見から浮上した問題点
3つの「時代遅れ」が怒りと不満に
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 第1の時代遅れは「品質」についての体制だ。属人的なサービス提供体制が品質の不安定さにつながっている。ユーザーは人手不足の中で「当社をよく知る担当者に頼る」という現状をいまや危機だと捉えるようになった。

 実際に、ユーザーからは次のような声が届いている。「当社の担当者が固定されているため、その人が他の用件でつかまらない場合、業務が進まない。その人頼みの状態に陥っている」(小売業)、「担当者が変わった途端に業務スキルが低下した」(建設業)。ベンダーに対してユーザーは「担当者個人のスキルよりも組織の対応力に期待している」(その他産業/業種)にもかかわらず、サービスの提供体制を見直そうとするベンダーは多くない。

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