アフリカで今、先進ITを活用した新たなサービスが次々と誕生している。銀行や固定電話、高速交通網といった先進国では見慣れたインフラが整っていない。そうした「後発」の立場を強みに、先進国をしのぐ最先端の仕組みを一足跳びに生み出している。砂漠の乾いた土が水をどんどん吸収するかのように人々や企業、社会は新たなITを受け入れていく。

真っ青な空をドローンが舞い、病人の命を救う。こんな世界最先端の取り組みがアフリカで始まっている。適切な治療を受けられない「医療難民」は過去のものになるかもしれない。

 アフリカの奇跡――。そう呼ばれる国がある。1990年代前半に大量虐殺(ジェノサイド)を経験しながら、IT立国を掲げて高成長を続ける東アフリカの小国、ルワンダだ。世界中から多くの先進ITを受け入れて社会課題を素早く解決し、成長のテコとしようとするルワンダは未来のアフリカを象徴しているといえる。

 首都キガリの中心部から車で西に1時間ほど。ユーカリの雑木林やいくつものバナナ農園を抜けると、白色を基調にしたコンテナが点在する広大な敷地が姿を現す。

 「ウィーン」。空に向けて斜めに伸びる発射台から、ドローンが勢いよく飛び立つ。飛行機のように見えるが大型のドローンだ。数秒で時速100キロメートル以上に達し、キガリ郊外の病院に直行する。

 ここは米シリコンバレー発のスタートアップ、ジップラインが2016年10月に運用を始めた医薬品配送センターだ。輸血用血液やワクチン、医療器材などを保管し、ドローンを通じて約20の病院に届ける役割を担う。

ジップラインのイスラエル・ビンペ氏。手前は同社が利用するドローン
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 現在のドローンは2世代目だ。ルワンダに15機を保有し、米国の試作機なども含めると60機を持つ。ジップラインは機体の設計から製造まで全て自社で手掛ける。機体は耐久性と保温性に優れた発泡スチロールでできており、全幅3メートルの大きさながら重さは21キログラムに抑えた。

 1.75キログラムの荷物を積んで、往復160キロメートルを飛ぶ。最高時速は130キロメートルに迫り、4つの回転翼を備えた平均的なドローンの4倍の速度を出せるという。配送センターや管制システムも自社開発だ。

 現在、ドローンは1日20~30回飛び、配達回数は2年弱で6000回以上を数える。運んだ血液パックは合計1万2000ユニットという。

 「東アフリカでは、我々のドローンが(今まさに)必要な人たちに血液を届けられている」。同社のケラー・リナウドCEO(最高経営責任者)はこう胸を張る。ドローンを使った配送サービスは米アマゾン・ドット・コムや米グーグル、中国アリババ集団といった世界の名だたるIT企業が商用展開に向けて実験を重ねている。そうしたなか、ジップラインはアフリカで2年近く前から先行して実運用している。

2時間の道のりが8分に

 いち早くドローン配送が可能になった理由は2つある。1つは交通網が整備されていない点だ。ルワンダは平地が少なく、険しい傾斜地が多い。しかもキガリから伸びる幹線道路を一本外れると未舗装の悪路が広がり、車で素早くモノを届けるのは難しい。

 ある病院は血液が足りなくなると、キガリまで車で往復2時間かけて調達していた。これがドローンを使うと8分で届く。

 看護師資格を持ち、ジップラインで政府との交渉役を務めるイスラエル・ビンペ氏は「ルワンダのほとんどの病院に30分以内に血液を届けられる。キガリを除いたルワンダの血液供給の2割以上は我々のドローンが運んだものだ」と話す。

 もう1つは血液を長期に冷却保存できない事情である。そもそも病院に冷蔵庫が無かったり、あっても頻発する停電で使えなかったりして、血液の在庫を持てない病院は少なくない。実際、ドローンを活用するようになってから、冷蔵保存できなくなってやむを得ず捨てる血液の量を95%以上減らせたという。配送センターでも停電は起こるが冷蔵庫がとまらないように電源設備を整えている。

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