アリババとテンセントは実に年6割近く売上高を伸ばしている。各社はさらなる成長の種を貪欲に狙ってR&Dに巨費を投じ、量子コンピュータや自動運転など新分野で覇権争いを繰り広げる。

 中国のIT産業を代表する企業といえば、少し前まではPC大手のレノボや通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)といったハードウエアベンダーだった。売上高5兆円近いレノボや10兆円を超えるファーウェイの存在は依然大きい。だがここまで見てきたように、ここ数年はネットビジネスで成長してきた企業が巨大なユーザー基盤を武器に金融や小売り、物流などに事業を拡大し、影響力を増している。

 例えばアリババ集団の売上高は2502億元(約4兆2000億円、2018年3月期)、テンセントは2377億元(約4兆円、2017年12月期)とレノボの背中が見えつつある。日本でいえば三菱電機(2018年3月期売上高は4兆4311億円)や富士通(同4兆983億円)と同規模だ。さらに驚異的なのは、前年度比の売上高成長率がアリババは58%、テンセントも56%にも上ることだ。アリババは2019年3月期も「前年度比60%以上の売り上げ増を見込む」といい、日本のIT企業を一気に引き離す勢いだ。

 アリババやテンセントがこれだけの急成長を持続的に達成できるのは、中国のネット産業が政府の実質的な外資規制に守られているから…などと甘く見てはいけない。各社は将来の成長エンジンを確保するための先行投資として研究開発に巨額を投じている。

 米プライスウォーターハウスクーパース(PwC)によると、2社にネット検索大手の百度(バイドゥ)を加えた「BAT」と呼ばれるIT大手3社は2013年頃から売上高の10%前後を研究開発に投じている。アリババは2017年に研究開発費でNTTを上回った。

図 中国IT大手の研究開発費の推移
アリババのR&D投資は既にNTT超え(出所:米PwC)
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 研究開発の内容も多彩だ。例えばアリババは2015年7月に政府直属の研究機関である中国科学院と共同で量子コンピュータの研究室を開設。2018年3月には開発した量子コンピュータをクラウドサービスとして提供し始めた。

 さらにアリババは2018年4月、ニューラルネットワークの演算に必要なAIプロセッサの開発に参入すると表明した。狙いについてアリババの馬会長は「中国はプロセッサ市場の100%を米国に支配される状況に慣らされていた。しかし、米国が中国にプロセッサを売らなくなる可能性を考え、中国もチップの技術を持つべきだ」と語る。

プラットフォーム目指し開発投資

 テンセントは、月間アクティブユーザー数が10億人を超える世界最大級のチャットアプリであるウィーチャットのプラットフォーム戦略を着々と進めている。2017年1月にはサードパーティが開発したミニプログラムをウィーチャット上で実行できるようにした。消費者向け事業を手掛ける企業などがウィーチャット上でミニプログラムを提供し、店舗や商品のプロモーションを展開するといった用途を想定している。2018年1月までに58万種のミニプログラムが提供されるなど一挙に広まった。「ウィーチャットのミニプログラムならばアプリのインストールや起動のハードルが一般のスマホアプリより低い。不要な画面遷移や広告でユーザー体験を阻害することもない」(テンセント国際ビジネスグループの何国斌シニアディレクター)。

 百度はクルマの自動運転向けソフトウエアで主要なプラットフォーマーの位置取りを目指す。2017年4月にソフトウエアの開発プロジェクト「アポロ計画」を始動させた。

 同プロジェクトは外部企業が自由に参画できる枠組みとしており、独ダイムラー、米フォード・モーター、ホンダの研究開発子会社である本田技術研究所といった主要自動車メーカー、米インテルや米エヌビディア、ルネサスエレクトロニクスなどの半導体メーカーも名を連ねる。2018年にはソフトバンク子会社がアプロ計画のソフトを載せた自動運転車を日本で試験走行すると表明した。

表 中国ネット大手3社の研究開発投資の概要
医療から自動運転車、量子コンピュータまで手掛ける
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