全工程を自動化した無人倉庫、自動運転トラックによる無人配送、空港や道路の混雑解消、コールセンターの自動応対――。様々な領域でAIの活用例が出始めている。主役はやはりアリババと京東だ。

 「中国の物流コストはGDP(国内総生産)の15%にも上る。AI(人工知能)やビッグデータなどの技術を使って比率を5%にできれば、中国の製造業に巨大な利潤の余地をもたらすことになる。これこそ菜鳥と物流業界が国家のために成し遂げるべきことだ」「菜鳥の望みは、24時間以内に中国全土へ、72時間以内に全世界へ荷物を届けられる体制を作ることだ」――。

物流事業への大規模投資を発表するアリババのジャック・マー会長(写真提供:アリババ集団)

 アリババ集団を率いる馬雲(ジャック・マー)会長は2018年5月31日、浙江省杭州市で開催された物流子会社菜鳥網絡の5周年イベントで力説した。まるで政府高官が自国の物流政策について演説しているかのように聞こえるが、馬氏はそれを一民間企業の投資として実現させると宣言してみせた。

(ジャック・マー会長の発言要旨)

 欧米主要国のGDPに占める物流コストは7~9%なのに対し、中国は約15%だ。AIやビッグデータを活用したスマート物流で5%に引き下げるのが我々の目標だ

 アリババは今後、24時間で中国国内、72時間で全世界のあらゆるところへ配送できるインフラを整備する。そのために物流事業へ1000億元(約1兆7000億円)、足りなければ数千億元投資する

 馬会長の言動から透けて見えるのは、破竹の勢いで成長を続ける中国IT大手が、前パートで紹介した「新小売」のみならず周辺領域へと次々に進出し、国家どころか世界のプラットフォーマーに向かって突き進む姿だ。

物流では出遅れたアリババ

 物流への展開をいち早く進めたのはライバルの京東だ。アリババと京東は主力のECのバリューチェーンにおいて、販売業者から商品を取り寄せたり消費者から注文を受けた商品を配送したりという点で物流とも関連が深い。アリババは外部の運送業者への委託が中心だったのに対し、京東は物流まで自社で手掛け、EC事業の成長とともに物流部門の業容を拡大した。

 「当社は500万人規模で物流サービスを展開している。企業向けのBtoB業態と、消費者向けのBtoC業態の顧客企業に対し、倉庫や都市間の輸送、小口の配達、物流管理システムなどのサービスを全面的に自社で提供できるのは京東だけだ」。京東集団で外部企業向けの物流サービスを統括する唐偉副総裁は胸を張る。

 京東の物流部門の売上高は年間200億~300億元(3400億~5100億円)規模だ。「2022年までに物流部門で売上高1000億元(1兆7000億円)を目指す」との方針を掲げている。日本の物流企業と比べると、売上高約1兆5000億円のヤマトホールディングスを抜き去り、同約2兆円の日本通運に迫る規模だ。京東のECの配送で培った先進的な物流サービスを法人顧客に提供し、自社の成長のエンジンとする戦略だ。

 京東の物流部門の技術力を象徴するのが、2017年10月に上海郊外に新設した総面積4万平方メートルの無人倉庫だ。「全工程を無人化した世界初の倉庫」をうたう。随所に配置したピッキングや運搬用のロボットがせわしなく稼働し、入庫した荷物のQRコードをスキャンして宛先ごとに仕分けたり、倉庫内に在庫を持つECサイトの商品に注文が入ると梱包して発送したりといった作業を全自動でこなす。処理能力は人手で処理する従来の倉庫の10倍に上るという。

図 京東集団が展開する無人倉庫
スマート物流で日本の先を行く 京東集団が「世界初」とする上海郊外の無人倉庫。総面積は4万平方メートル(写真提供:京東集団)
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倉庫に届いた荷物をロボットアームが取り出し、バーコードを読み取って専用コンテナに載せる(写真提供:京東集団)
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自動搬送ロボットが荷物を仕分け、配送先ごとの仕分けシューターに投入(写真提供:京東集団)
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(写真提供:京東集団)
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ECサイトで注文された商品に合うサイズの段ボールを組み立て、商品を梱包する(写真提供:京東集団)
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